2023.04.24 08:37
教え子と一緒に成長 旭東小教諭 内藤祐理子さん(23)高知市―ただ今修業中
「何て言ってると思う」と問いかける内藤祐理子さん。「子どもたちの言葉を引き出したい」(高知市北端町の旭東小学校)
児童に向かって口を開く。「朝、学校に来たら何て言う?」。子どもたちが口々に「おはよう!」と返す。
電子黒板に竹馬を友達に貸す子、友達の本を落としてしまった子らのイラストを映し、空欄の吹き出しを指さして、「何て言ってるのかな」。すぐに児童が「はいっ、はいっ」「分かったー」。われ先にと手を挙げ「ありがとう」「ごめんねって言う」。元気いっぱいの子どもたちに、「日々の成長がうれしい」と目を細める。
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小学4年の頃。ベテランの男性教諭は、自分たち子どもの意見をよく聞いてくれた。授業で意見を発表すると、「その考えは○○さんと一緒だね」。友達とつながれたことがうれしかった。友達から出てくるのは、自分にはない考えだったり、違った見方だったり。みんなで一緒に授業を作っているようで、楽しくて、「あんな先生になりたい」と憧れた。
大阪府泉佐野市出身。実家から関西学院大学(兵庫県)に通い、教員免許を取得。第一志望だった大阪府の教員採用試験は落ちたが、腕試しで受けていた本県から、昨年1月末に採用の知らせが届いた。見知らぬ地。初の1人暮らし。不安はあったが、「これも縁」と飛び込んだ。初めて持ったクラスは、高知市の旭東小学校2年生の子どもたちだった。
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児童みんなで「スーパー2年生になる」と決めた。そのために、廊下を走らない▽授業中に立たない、おしゃべりしない―。学校の決まりを確認した。
それでも、ささいなことから子ども同士のけんかが始まった。言っても聞かない。どう伝えればいいのかも分からない。「もう無理かも」と思った。
そんな時、先輩教員に言われた。「一方的に指示しても伝わらんよ」。隣のクラスのまねをして、「お星さま」の取り組みを始めてみた。みんなで決めた1日の目標をかなえると、黒板の脇に星のマグネットを張るという仕組みだ。星がたまれば、お楽しみ会を開くことにした。
「帰る時は椅子をしまう」「みんな仲良く」などのルールに加え、その日の朝の会で日直が「ありがとうを5回言う」「けんかしない」といった目標を伝えた。あっという間に100個、200個とたまった。
やがて子どもたちが教室に落ちているごみを拾ったり、困っている友達を手伝ったりするようになった。自分で考え、動く児童の姿に感激し、見る度に「すごいね」「すてきだね」と伝えた。「一方的に言うのではなく、自分で考えさせることが大事だと気付いた」
好きな言葉
目指すは、小学4年の頃に憧れた先生。「とはいえ、まだまだです」。教え子と一緒に成長を誓う。
写真・土居賢一
文 ・加藤風花