2023.01.17 08:35
「欲捨てて逃げろ」静かに呼び掛ける地震碑 高知県内の沿岸部、3D保存も―高知地震新聞
南海トラフ地震の被害と後世への警句を刻んだ地震碑は、県内沿岸部に40基以上残る。古来、地域の中心だった神社に多く据えられているのは、多くの人に伝えたいという思いが込められているから。「欲を捨てて逃げろ」「油断するな」―。各地のメッセージをたどった。
宝永地震の犠牲者を供養する地蔵尊(須崎市の大善寺)
宝永地震は、過去の南海トラフ地震の中では大規模だった。土佐藩士が被害をまとめた「谷陵記(こくりょうき)」によると、須崎では集落が壊滅し「亡所」になったとある。地蔵の台座には、津波で地域の330人が溺死したと刻まれている。
「大敵にあひぬ」
地震碑は、さらに150年後の安政地震(1854年)を経て、犠牲者の鎮魂や後世への警句が刻まれるものが増えた。宝永、安政を経て、地震が「繰り返す」という災害知が地域に浸透したためで、碑はより目立つように大型化していった。
安政地震を機に「懲毖」を訴える碑(香南市の飛鳥神社)
土佐市宇佐町の漁協前には、1946年の昭和地震の碑が立つ。地域の8割に当たる1320戸が被災したが、死者・行方不明者は2人で、「犠牲者ノ僅少(きんしょう)ハ コノ戒(いましめ)ニヨル」と記す。「コノ戒」とは、地域で伝わっていた「欲ヲ棄テテ逃レタ者 命助カリシ」のことだ。
仁井田神社の碑文拓本。中央に「ゆたんすへからす」とある(県立歴史民俗資料館所蔵)
地震碑の3D保存に取り組む谷川亘さん(南国市の高知コア研究所)
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