2024年 05月08日(水)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2022.07.18 08:20

【2022参院選 高知/徳島】参院選を終えて 高知県内政党座談会

SHARE

 約9カ月の岸田政権の評価が問われた第26回参院選は、自民党が単独で改選過半数を確保する大勝で終わった。3度目の合区選挙となった徳島・高知選挙区では、自民現職の中西祐介氏(43)が、共産党新人の松本顕治氏(38)ら5候補を圧倒して3選を果たした。比例代表の特定枠で出馬した元高知県議の自民新人、梶原大介氏(48)も初当選した。県内主要政党の幹部に選挙戦の総括のほか、憲法改正論議を含めた今後の国政展望、来年の統一地方選・知事選などへの対応を聞いた。(参院選取材班)

■自民党県連幹事長 西内健氏
■公明党県本部幹事長 西森雅和氏
■立憲民主党県連代表 武内則男氏
■共産党県委員長 春名直章氏
■社民党県連合代表 久保耕次郎氏
司会=池一宏(高知新聞社報道部長)

政策具体化これから 西内氏
政治安定を国民望む 西森氏
与党との対峙示せず 武内氏
共闘揺らいでいない 春名氏
護憲政党の役割維持 久保氏


【総括】
 ―自民は選挙区で圧勝した。総括を。

 西内 岸田政権の政策の具体化はこれからだが、安定した自公政権に任せたいと有権者が考えた結果だろう。選挙区では、市町村長の大半が総務副大臣である中西氏のマイクを握り、自民組織とうまく連携できた。全市町村で勝利したのは6年間、中西氏が地域に入り、成果を上げてきたからだ。

 ―昨秋の衆院選で圧勝した中谷元氏、尾﨑正直氏が活発に動いた。

 西内 中西氏の知名度を上げるため、2連ポスターを張ったが、2人の個性が強すぎて中西氏が目立ったか正直疑問だ。無党派層まで浸透したか、しっかり分析する必要がある。高知市で5万票出たのは大きな成果だ。

 ―特定枠の評価は。

 西内 1県1代表を出し、地方の声を届ける意味で特定枠は必要だ。特定枠がなければ徳島との選挙区調整も難しくなる。ただ、自分の名前も政策も訴えられないいびつな制度であり、合区解消の声は上げ続けなければならない。

 ―野党候補乱立が有利に働いたのでは。

 西内 それはある。野党に先んじて候補を決めたことで、考えの浸透もできた。

 ―中西氏を推薦した公明党の総括を。

 西森 しっかり支援した。(特定枠がなく比例で自民候補と競合した)6年前とは違う。比例で県本部として推した候補が3位当選できた。国民が政治の安定を望み、自公政権への期待が表れた。

 ―県内で比例票を減らした。

 西森 自民、維新を除く既成政党は比例票を減らした。比例で個人の候補者名を浸透させるのが大変だった。

 ―選挙区候補が不在だった立憲民主党の総括は。比例票は1万1千票減った。

 武内 戦わずして結果も評価もない、と突き付けられた。重く受け止めている。比例重視の戦いの中で、与党と対峙(たいじ)する姿を提示できなかった。

 ―候補を立てられず、野党共闘も成立しなかった要因は。

 武内 野党候補を統一して戦ってきた歴史を大事にし、与野党1対1の構図を作るために、立てなかった。各党とも党勢拡大は至上命令。国民、維新も候補を擁立し、一本化に持っていけなかった。

 ―県連は自主投票。武内氏は松本氏支援のマイクを握る一方、代表代行の広田一氏は動かず、県民に分かりにくかったのでは。

 武内 私自身は一人の政治家として、これまで(県内共闘の)中枢にいた責任をまっとうした。徳島県連が自主投票を決め、全然違う判断にはならない。重い決断だった。支持者からは厳しい意見をもらった。

 ―共産は松本氏が19年に続き2位となったが、得票率を大きく下げた。

 春名 社民党や市民団体、県議会会派「県民の会」の県議からも応援をもらい、武内氏も支援してくれた。「市民と野党の共同」の候補として戦い、自民の補完戦力の維新、国民の候補と比してかなり上だった。市民と立憲野党の共同しか、政治を変える道はないと実感した。

 ―最大の敗因は。

 春名 共産が十分な力を持ちきれていないことだ。共産の力をもっともっと草の根で大きくしないと、1人区で勝つのは難しい。

 ―野党共闘の体制が崩壊したのでは。

 春名 崩壊という評価は間違っている。県内ではいささかも揺らいでいない。立民が候補を出さなかったのは、松本氏に一本化するというシグナルでもある。今までの共闘より構図としては弱かった面は否めないが、ばねにして次に向かう。

 ―社民は比例の得票率が2%をクリアし、政党要件を維持した。

 久保 前回より多くの比例候補を立て、党を見せる機会を増やせた。引き続き護憲政党の役割を果たせる。

 ―選挙区で松本氏を支持したが、立民は松本氏に乗らず、共闘は限定的だった。

 久保 野党共闘は継続していかないといけない。今回、社民と立民の対応に違いはあったが、歴史を積み重ねることが重要だ。


【国政展望】
 ―今後の岸田政権について与党の注文は。

 西内 「新しい資本主義」はわれわれもまだ具体的な中身が分からない。成長と分配の具体策を国民にしっかり示してほしい。

 ―安倍晋三元首相が亡くなった。自民内の力学はどう変わるか。

 西内 今のキーマンは高齢。そこをつなぐはずだった安倍氏が亡くなったのは大きな損失だ。どうなるか見ていきたい。安倍氏の遺志を継いで、党是である憲法改正にはしっかり取り組むと思う。

 西森 物価高騰対策は大きな課題だ。公明は電気料金の負担を軽減する取り組みを政府に申し入れている。最低賃金の引き上げや賃金の地域間格差の是正も進めていきたい。

 ―野党は岸田政権をどう見ているか。

 春名 年金が下げられ、10月には(一定所得のある)75歳以上の医療費の窓口負担を倍増させる。一方で軍事費は財源を示さず、2倍近く上げることだけ掲げた。状況はひどくなっており、野党で力を合わせ、追及する。

 久保 物価高など多くの問題がある。通常は秋の臨時国会を8月でも開くべきた。

 武内 物価高で国民の生活は相当厳しいのに具体的な答弁はなく、のらりくらりの政権だ。「検討する」の答弁が非常に多い。

 ―立民の「提案型」の国会対応には支持者から賛否があった。

 武内 政権に対峙できていなかった。政権の問題点を明らかにする行動が取れておらず、ふらついた。腰が引けた面は変えるべきだと再三求めてきた。

 ―改憲勢力が3分の2以上の議席を占め、岸田首相は早期の改憲に意欲を示している。

 西内 党は4項目の改憲案を掲げている。国民に理解してもらった上で早急にやるべきだ。2年以内ぐらいにやらなきゃいけないと思う。高知にとっては南海トラフ地震を踏まえた緊急事態条項が一番重要だ。合区解消も法改正で対処できるのかを含め議論したい。

 ―「改憲勢力」と言われる公明は?

 西森 国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の三原則は堅持しないといけない。その上で新たな課題があれば、議論するという「加憲」の立場だ。改憲勢力と言っても各党の考え方があり、合意形成には相当な議論をしないといけない。

 ―公明は「平和の党」を掲げる。自民は自衛隊の違憲論を解消するとして9条への自衛隊明記を提案している。

 西森 9条の1、2項の堅持が党の明確なスタンス。多くの国民は自衛隊を違憲と思っていない。書き込む必要があるのかも含めた議論になる。

 ―野党はどう対峙していくのか。

 武内 改憲が必要な具体的な問題が出てきた時は改憲するべきだ。しかし自民の改憲案は愚の骨頂だ。緊急事態には対応する内容が既にあり、合区解消も法改正でできる。改憲の目的ありきの国会運営には乗れない。

 久保 緊急事態条項は内閣に権限を集中させ、人権やあらゆるものが制約される。護憲の立場で分かりやすい憲法の伝え方を市民団体と検討していく。

 春名 自民の狙いは9条だ。9条は戦争の犠牲の上に侵略戦争をしないと宣言している。自民案は9条1、2項を死文化させ、専守防衛を投げ捨てる憲法になる。論外だ。

 西内 憲法は国柄や国体を表すはずだが、今の憲法は米国に押しつけられたものだ。9条も自衛隊の存在があるのに矛盾がある。

 春名 今の憲法には植木枝盛ら自由民権運動が引き継がれている。憲法は国民の権利を守るために権力者を縛るものだ。

【統一地方選・知事選】
 ―浜田県政への評価と来秋の知事選への対応は。来年4月には県議選を含めた統一地方選挙も控えている。

 久保 浜田省司知事は、コロナ禍で県政トップとしての発言が見えない。前回知事選では野党統一候補を推薦した。今回もできれば野党で対立構造をつくって戦いたい。

 春名 浜田県政は中央直結の施策から一歩も出ず、内需で地域を元気にしていく姿勢が弱い。知事選は野党の皆さんと協力して戦える態勢になれば。現職5人の県議選は6人の県議団を必ずつくる。1人区では県民の会を支援することになる。できるだけ共同の形をつくりたい。

 武内 浜田知事は、コロナ禍で大胆な政策的打ち込みができず、県政運営に相当苦慮している。県民の命と暮らしを守る立場からの堂々とした発信が少し欠けている。知事選対応は白紙だ。県民の会とも県政評価についてしっかり意見交換して対応を進める。県議選の第一目標は同会現職の全員当選だ。党公認を1人でも増やしたいし、市町村議をしっかり増やしたい。

 西森 知事が就任して今まではコロナ対策一色だが、さまざまな面で堅実に仕事を進めている。関西戦略も厳しい状況ではあるが、なんとか前に進めようという思いは評価すべきだ。知事選は誰も立候補を表明していない中でコメントしようがない。県議選は3議席の維持を目指す。

 西内 浜田知事は、関西戦略など本人がやりたい政策ができる時期になれば、政治的な発信力は変わってくるだろう。私も知事選は今の段階ではコメントを控えたい。県議選は特に2人区で2議席獲得できるよう頑張りたい。候補が出てくるのを待つだけでなく、発掘しなければいけない。

 ―浜田県政はコロナが足かせになっているということか。

 西内 今の県の政策を見てもコロナ対応と前知事から受け継いだ部分が主で、関西戦略を訴えながらもできていない。カラーは出そうとしているけど、なかなか伝わりきっていないところもある。


【徳島維新の会幹事長 梅村聡氏 空中戦 仕方ない】
 維新は合区の選挙は初挑戦だった。残念な結果だが、高知県民に維新がどういう社会を目指すのかを知ってもらう良い機会になったのではないか。今回は徳島で重点的に活動した。完璧に回りきるのは無理で、空中戦にならざるを得ない。

 候補者本人や陣営も含めて積極的に「合区が問題だ」という声は聞かなかった。これはこれで、制度として定着してきているのでは。マスコミや政治家が思うほど、有権者が問題だと思っていないのでは、とも感じた。

 高知の声を伝え、代弁するのは大事だが、日本は二院制で衆議院もある。われわれは参議院や国会の在り方自体を見直したい。

 党の比例票は野党で1位。全体として議席は倍増した。選挙区では大阪や兵庫では議席を取れたが、東京、京都、愛知は惜敗。これは地方議員の差だと感じている。関西の地方政党から全国政党になるには、足場固めや筋トレが必要だ。

 徳島では昨年の衆院選で比例の議席を得て、来春の統一地方選に向けた方針が決まりつつある。支部がない高知では、われわれがサポートしながら具体的な人選を進めたい。今回の参院選、来春、次の衆院選と「ホップ、ステップ、ジャンプ」を目指す。


【国民民主党高知県連代表 大塚耕平氏 共闘 無理がある】
 徳島・高知区では直前の候補擁立になり、準備不足だった。候補の頑張りもあって、日を追うごとに主張が浸透していったとは感じたが、他と同じ選挙期間で2県を回らないといけないのは運動量の問題として制約が極めて大きい。有権者に選挙活動を見せる機会も一段と少なくなり、合区の問題点を如実に感じた選挙戦だった。

 自民党は改憲による合区解消を掲げているが、今のままでも合区は即解消できる、というのがわが党の考えだ。改憲にこだわるのではなく、解消という目的のためにどうすればいいのか、という結果にこだわるべきだ。

 今回、32の1人区で野党は4勝28敗だった。共闘のなかった13年は2勝。共闘した16年は11勝、19年は10勝だった。今回の結果はやむを得ない。基本的な考え方が違う政党同士の共闘が本当に選択肢になるのか。各党の主張の違いに目をつぶって「与党に勝つための共闘」というのは無理がある。

 3月に立ち上げた県連組織は今後、さらに態勢を強化したい。県連の役員や幹事に高知の人に就いてもらい、徐々に地元が運営する形にしたい。統一地方選は党の足場を固める機会になるので、高知を含めて各県で候補者の擁立を進めたい。

この記事の続きをご覧になるには登録もしくはログインが必要です。

高知のニュース 政治・選挙 2022参院選 高知/徳島

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月