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2022.02.16 13:14

【五輪コラム】数少ない「延慶取材班」 海外と人気の違いを実感

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 延慶の国家スライディングセンター=16日、延慶(共同)

 ホテルの6階にある部屋のカーテンを開けると、茶色い山並みが視界いっぱいに飛び込んできた。北京北部の山間地帯・延慶で担当のそり競技を取材している。この地域で行われているのは他にアルペンスキーだけ。二つとも日本の注目度は高いとは言えず、大会期間中を通して延慶に常駐している日本メディアはおそらく弊社だけではないか。


 スケートは北京中心部で、ノルディックスキーなどは河北省張家口で行われている。予想はしていたものの、日本からは寂しい道中となった。北京行きの航空便には他社を含めて20人余りの報道関係者がいた中、空港から延慶方面に向かうバスに乗り込んだのは1人だけ。「次に会うのは帰りの飛行機ですね」と苦笑いしながら同僚たちに別れを告げた。バスの座席間の狭さに驚かされたが、幸いにも席は選び放題。唯一、前にシートのない最後列中央の席にどっかりと座り込んだ。


 日本で取り上げられることはあまりないはずなので、延慶の紹介を少し。北京からはバスに揺られること約2時間。高速鉄道を使えば30分ほどだが、張家口を結ぶ路線はない。そり競技が終わる夜遅くには北京路線も動いていないことも、この地に足が延びにくくなる理由の一つだろう。万里の長城も近いそうだが、当然外部から遮断された「バブル」の中。視界に捉えられる機会は訪れそうにない。夜の気温は氷点下10度ほど。13日には初めて、積もるほどの雪が降った。


 市街地にあるホテルから、そり競技が行われている国家スライディングセンターまではバスで1時間弱。コースの全長は約1600メートルで、五輪史上最長だそうだ。360度回るカーブが印象的なコースは龍の姿をイメージしたそうで、夜にライトアップされて浮かび上がった姿を見て「アイス・ドラゴン」の通称に納得した。


 会場のふもとから取材拠点となるメディアセンターまでは、坂道を上ること約15分と事前に聞いていた。「毎日続けたらいい運動になるな」と思ったのは一瞬で、あまりの急勾配に音を上げて2日目からは早々に巡回バスに切り替えた。エンジン音を聞く限り、車にとってもこの坂道はきついようだ。センターに入ると、なんだ、アジアの記者は何人もいるじゃないか。ただ、話し声を聞くとどうやら全員が中国か韓国の記者。日本語を勉強しているというボランティアにうれしそうに話し掛けられた。「やっと日本の方に会えました」


 競技が盛んなドイツやロシア、米国の記者は多く、日本との人気の違いを改めて実感させられた。優に時速100キロを超すスピードが出るスリリングなそり競技。レースを見ながら、自国の選手の結果に一喜一憂し、メダルを取れば勝ちどきを上げる。その様子を目にし「どうすれば日本もこうなれるか」と考えてみた。


 韓国の記者が会場にいるのは、前回平昌五輪のスケルトンやボブスレーでメダルを獲得していることが大きいだろう。かつては日本のスケルトンが五輪で入賞し、話題を呼んだことがある。単純だが、やはりまずは好結果を出すしかない。2030年冬季五輪の招致を目指す札幌市の計画では、そり競技は札幌から離れた長野市の「スパイラル」で行う。長野が“延慶化”しないためにも、次回の26年五輪はとりわけ重要になるだろう。


 ちなみに北京パラリンピックで行われるアルペンスキーは日本期待の競技で、五輪と同じ会場で実施される。五輪よりも「延慶」の地名が報じられる機会は多くなりそうだ。(共同・中嶋巧)

(c)KYODONEWS

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