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2022.02.12 09:51

【五輪コラム】「ドイツのお家芸」北京でも好調 リュージュ、4種目完全制覇

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 五輪で3連覇した英雄、ゲオルク・ハックル(ロイター=共同)

 1964年のインスブルック大会で五輪に初めて登場してから、東西に分かれていた時代を含めて金メダルを取れなかった大会はない。ドイツ選手にとっては勝って当然の「お家芸」といっていいだろう。そりに乗って氷のコースを滑り降りるリュージュでドイツ勢は今回、男子1人乗り、女子1人乗り、2人乗り、チームリレーの全4種目に勝って完全制覇した。


 ▽そり競技で最速


 つま先を前にしてそりの上にあおむけの状態で進む。そり系の競技はハンドルとブレーキが付いているそりで滑走するボブスレーと、頭を前にして滑るスケルトンもあるが、時速130キロを超える最高速度が出るリュージュが最もスピードの出る競技だといわれている。スタートではほかの2競技が助走をつけてコースに出るのに対し、リュージュはそりに座ったままびょう状の突起が着いた特殊な手袋で氷をかいてスタートする。


 超高速レースで、ミクロの戦いとなるためタイムは1000分の1秒まで計測される。1人乗りは2日間で4回滑走して合計タイムを争うのだが、1998年長野大会の女子1人乗りは4回滑ってわずか1000分の2秒差、距離にして約6センチの差で金、銀のメダルの色が決まった。


 そり競技はスイスが起源といわれ、伝統的にオーストリア、イタリアなど中央ヨーロッパの国々が強豪だ。その中でもドイツのリュージュの強さはずばぬけている。スタート後はいかに無駄なく滑るかがポイントで、細かい計算を立てながらそりを操る緻密さがドイツ人の性格に合っていると話す人もいる。


 ▽伝説の男ハックル


 栄光の歴史の中で特に輝きを放ったのが男子のゲオルク・ハックルだ。西ドイツ代表として出場した88年カルガリー大会の1人乗りで銀メダルを獲得すると、92年アルベールビル大会から長野大会まで史上初となる3連覇を達成。2002年ソルトレーク大会では銀で、5大会連続のメダル獲得となった。


 ドイツ国民に愛される存在だったのは、強いばかりではなかったからだ。口ひげを蓄え、ずんぐりとした体形。レース用のスーツをパツパツで着ることから「スピード違反のソーセージ」の愛称が付いた。


 生まれ育った南部ベルヒテスガーデンのなまりが強くて、インタビューではドイツのテレビに「通訳が必要」と冗談を言われるような一面も、彼の憎めないところだった。7位に終わった06年トリノ大会を最後に39歳で引退したが、記者会見では「若手を表彰台に乗せてみせる」と話し、指導者として後継者の育成に尽力した。


 ▽34歳の母、通算メダルは金6、銅1


 そのハックルを「自分のヒーロー」として競技を続けてきたのが女子1人乗りで史上初めて3連覇を果たした34歳の警察官、ナタリー・ガイゼンベルガーだった。トップが2度、2位が2度という安定した滑走で4回を滑りきり、同僚のアナ・ベライターに0秒493の差をつけて快勝した。


 チームリレーも3大会連続で制し、金メダルの総数は6個。さらに、10年バンクーバー大会での銅メダルを加えたメダル7個はリュージュ史上最多となった。


 2年前に長男レオ君を出産。練習環境が難しくなった状況での頂点に「母となっての金メダルがとにかくうれしい」と道のりを振り返り「メンバー全員の金メダルは合わせて8個。ドイツにたくさんメダルを持って帰れる」と大喜びだった。(共同通信・江波和徳)

(c)KYODONEWS

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