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2022.01.04 08:00

【再生へ 経済】新たな動きをとらえて

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 岸田政権が提唱する「新しい資本主義」の構築へ、成長と分配の好循環を目指す取り組みが本格化する。格差是正へつながる施策をいかに積み上げるか、真価が問われる。
 新型コロナウイルス禍で停滞した経済活動は、感染の落ち着きで明るさも見せる。半導体不足などで滞った生産は回復しつつあり、飲食や宿泊も持ち直しの動きが出てきた。
 しかし、業種によるばらつきがあり、先行きは予断を許さない。感染再拡大への懸念は根強く、原材料価格の上昇や人手不足ものしかかる。正常化には時間がかかりそうだ。必要とされる支援策を的確に届けるとともに、コロナ後をにらんだ準備も進める必要がある。
 安倍・菅政権の経済政策は成長力を欠き、大幅な株高は演出しても労働者の賃金上昇にはつながらなかった。これに対し岸田文雄首相は「分厚い中間層の再構築」を主張する。
 そのために分配の強化を掲げ、賃上げに積極的な企業を税制支援する。企業は「内部留保」を蓄えてきた。人件費に回すように仕向けるのは分かりやすい。だが対象企業は限られ、効果は不透明だ。有効に機能させるには継続性も欠かせない。
 首相が選択肢の一つとした株式の配当や売買にかかる金融所得課税の見直しは先送りされた。株価の下落圧力となり、議論はしぼんでしまった。夏の参院選をにらみ増税は避けたとみられている。政策実行で格差を是正しようにも、政権の意欲が乏しければ実現は遠のいてしまう。
 分配の原資を生む成長戦略も、経済対策の規模を膨らませるだけでは効果は期待しにくい。新型コロナで歳出拡大が続くが、財政再建への道筋も目配りを怠れない。緊張感ある取り組みが求められている。
 コロナ禍からの景気回復を背景に、米国の中央銀行、連邦準備制度理事会(FRB)は金融政策の正常化へ動き始めた。急激な物価上昇に直面しているためだ。だが、引き締めを急ぎすぎると世界経済に悪影響を与えかねない。
 物価急騰でバイデン米政権の支持率は低下している。経済の立て直しへ巨額の財政出動を行ってきたが、物価高とも向き合わなければならなくなっている。これらへの対応は中間選挙の結果にも関係してくる。
 日本は物価の伸びは鈍いが、資源高や円安で価格転嫁の動きが一部に出ている。日銀はコロナ禍への企業支援策を縮小する。危機対応からの脱却は先になりそうだが、状況に応じた細やかな対応が求められる。
 首相は新しい資本主義の主役は地方だと述べている。デジタル化で地方から国全体へボトムアップの成長を実現すると意欲を見せる。
 デジタル化にとどまらず、地方に活力を生む政策が求められていることは間違いない。具体化の道筋を明確にする必要がある。
 地球温暖化への意識が高まる中で持続可能性にも関心が向けられる。高知県も新たな動きを着実にとらえ、重層的な対策で人口減と高齢化を乗り越えていきたい。

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