2002.02.11 11:30
土佐の果物語(7) 第1部 (7)地元志向 すみ分けくっきり
「そんなことはないですよ。高知の消費者は地元志向が強いんです。果物を贈るなら『絶対に高知のものを』という思いがあって、県外産と競合をすることはまずありません。新高ナシも『おらんくのナシ』という地元意識に支えられてきました」
そう解説してくれるのは高知市内の青果店主。県内産は贈答用、県外産は家庭消費用――とすみ分けができているらしい。桃やブドウの産地として知られる岡山県と並んで、県産果実に対する思い入れの強さでは際立っているそうだ。
実際のところ、県外産との味の優劣は?
朝七時、高知市弘化台の高知市中央卸売市場。仕入れに訪れる青果店主や量販店のバイヤーに交じって、味比べに挑戦してみた。
青果店主やバイヤーは、小さなナイフを前掛けのポケットから取り出し、産地や生産者別に置いてある味見用の新高ナシを一かけらずつ切り取っては食べていく。自分の舌で味を確かめて競りに臨むのだ。真剣な表情でシャリッ。
こちらも、にわか評論家となって市場関係者に感想を話してみる。
「これは味がないような気がする」「少し県産に近いかな」
それに対して「味がないと感じたのも数日おけば風味が出てきますよ。一般に県外産は舌触りがゴワつきますが、県産のナシは香りがあって口の中に甘味が広がりますね」と教えてくれた。
食べ比べた結果は、やはり県産の味が優れているように感じた。が、この優位が将来も安泰かと言えば、懸念もある。その辺りをあるバイヤーが口にした。
「今、贈答用に県産の新高ナシを買っているのは、県産ならではの味を知っていて、お金にも余裕のある中年より上の層が多い。若い世代が今後、その価値を認識して買ってくれるかどうか…。こんなに多くの新高ナシが県外からやって来る時代だしね」
生産技術だけでなく、消費者に“おらんくの味”をどうやって覚え込んでもらえるかを考える時が来ているのかもしれない。(経済部・竹村朋子)