2017.06.12 08:15

奇跡の笑顔 全盲・重複障害を生きる(23)重症児デイ乱立の懸念

重症児デイサービス「幸のつどい」で働く山崎さん(右)=高知市布師田
重症児デイサービス「幸のつどい」で働く山崎さん(右)=高知市布師田
■うかうかできぬ理由■
 重症児向け放課後等デイサービス(放デイ)事業所立ち上げへの山崎理恵さん(50)=高知市=の性急な行動には事情があった。放デイ施設の運営条件が2017年度以降、一段と厳しくなるのだ。

 5年前に制度化された放デイは施設が急増。全国で8千カ所を超える。増加とともに利益優先的な事業所が問題化。国が見直しに入ったのだ。2017年度から職員要件を強化。2018年度は報酬引き下げもあるらしい。そうなると、今は放デイの大半を占める一般障害児対象の施設が、報酬の高い重症児デイに参入しかねない。重症児の受け入れ施設が増えること自体は望ましいのだが、NPO法人・ふれ愛名古屋の鈴木由夫(よしお)理事長(66)は「介護の質を無視して重症児デイが乱立すると、子どもの命にかかわるんです」と懸念する。

 というわけで、山崎さんは娘の盲学校寄宿舎入舎問題よりも優先。看護師資格を生かして2016年10月、音十愛ちゃんが世話になっている高知市内の重症児デイ「幸(さち)のつどい」で研修を兼ねて働き始めた。そして、受け入れ側に立ったことで、重症児家庭の需要に応えきれてない実情を肌で知る。

 高知県内には幸のつどいを含めて医療的ケア児(医ケア児)を受け入れる重症児放デイ施設は七つ。うち六つが中央部に集中している。医ケア児とは気管切開したり、人工呼吸やチューブ栄養が必要な子どもたち。医療の進歩に伴い、医ケア児は急増。全国で1万7千人、人工呼吸器利用は3千人にも上る。

 呼吸器使用など医療依存度が高い場合、看護師がいても施設側は受け入れをためらう。慣れるまで母親の付き添いが必要だったり、逆に母親が他人に任せるのを不安に思い、施設へ行っても帰らず付きっきり。結局、休息にならないケースもある。また、預けるための外出準備も酸素ボンベや痰(たん)吸引器の装着などは大変。ハードルの高さもあって母親は疲れ果てていた。山崎さんもそれに近い状況だっただけに思いにかられたという。

 こう書くと、山崎さんの行動は理屈的に無理がなく、すんなり運んだかに思えるのだが、実は出だしで大きくつまずいた。

 それは2016年9月末。鈴木理事長を招き、「なければ創ればいい」の話を関係者で聞いたのだが、反応は空振り。約30人が午前中の総論を聞いたが、午後の各論編に残ったのは数人だった。

 「落ち込みましたね。肝心の運営ノウハウを知ってほしかったんですが、みなさん、『そこまでは』という感じだったんでしょう。私の独り善がりだったのかも」

 だが、諦めきれない。2カ月後、再び理事長を招き、今度は人数を絞って聞く。そして「自分が核でやるしかない!」と腹をくくったのだ。

 後日、私は鈴木理事長と面談した際、9月の空振りについて尋ねてみた。すると笑って言った。

 「失望した? とんでもない。むしろ正解ですよ。大勢が集まって始めると途中で分裂するんです。強い意志を持ったお母さんが1人いれば大丈夫。僕は何度も経験してますから。山崎さんは成功しますよ。だって、目標達成に対する執念がきちっとしてるもの」

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