過ぎし日の映え
高知市出身の作家、野田正彰さん敗戦後の少年時代から青壮年期へと自身の足跡をたどり、どのように思索し、対話し、生きてきたかを記すセッセイ。
37記事
過ぎし日の映え
高知市出身の作家、野田正彰さん敗戦後の少年時代から青壮年期へと自身の足跡をたどり、どのように思索し、対話し、生きてきたかを記すセッセイ。
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野田正彰氏「過ぎし日の映え」(37)旅する治療
挿絵・宮川優希 長浜赤十字病院精神科を基幹とする地域精神医療は発展し、ここを初診して退院できずに慢性化する人はいなかった。だが他の精神病院で症状が固定慢性化した人が少なからず転院してきており、彼らは私...
野田正彰氏「過ぎし日の映え」(38)倒産、サラ金禍の死考察
挿絵・宮川優希 1984年3月末、第一線の精神科臨床を辞めた。私の誕生日は3月31日なので、区切りよく40歳、精神医学に打ち込んで15年がたっていた。 新しい生き方、別の職業を生きるには、人生の潮時が...
野田正彰氏「過ぎし日の映え」(39)突っぱり老人の里
挿絵・宮川優希 病院で働くことを辞め、私は精神的な失速を感じた。気力が真空の谷間に吸い込まれたようだった。 15年間、精神科臨床に集中してきた。朝、病院に入っていくと、多数の患者さんが廊下に待ってい...
野田正彰氏「過ぎし日の映え」(40)お囃子文化に生きる
挿絵・宮川優希 ドイツ国鉄(DB)はいつ乗っても快い。老いて眼(め)や脚が悪くなるまで、私はレンタカーで旅をするのが好きだった。今は鉄道パスを買って旅する。 日本JRとの違いは、まず全てが静かなことだ...
野田正彰氏「過ぎし日の映え」(41)人を支配する情報社会
挿絵・宮川優希 情報とは何か。採集狩猟社会、農耕社会、産業革命後の工業社会、そして情報社会へ。何かがゆっくりと忍び寄っており、意識して振り返ると急速に変わっている。ゆっくりと、急速に。 農耕、工業社...
野田正彰氏「過ぎし日の映え](42)トップ経営者の人間学
挿絵・宮川優希 1983年秋に常勤の精神科医を辞めてから3年、取り組みたいと思って時間をとれなかった調査研究に打ち込んできた。不安をエネルギーとして疾駆迷走して止まない現代社会について、『都市人類の心...
野田正彰氏「過ぎし日の映え」(43)「賞」の文化再考
挿絵・宮川優希 文学作品そのものより、重要な賞の受賞の方が話題になる。この転倒はいつから始まったのか。賞の文化は戦略的に創られ、永い年月をかけて磨かれ、宣伝されてきたものである。 ◆ 最近、飛行機の機...
野田正彰氏「過ぎし日の映え」(44)悲しみを変えた研究
挿絵・宮川優希 学問は歴史をもって発展してきた知の体系であるとともに、学者が直面している現実との対話である。精神医学も永い歴史をもっているとともに、何を研究対象にするかによって、知のあり方が変わってく...
野田正彰氏「過ぎし日の映え」(45)月の砂漠の水浴び
挿絵・宮川優希 1980年代、リビア・アラブ共和国とアメリカとの罵(ののし)りあい、掴(つか)みあい、喧(けん)嘩(か)は絶えることがなかった。とりわけアメリカからの挑発は執拗(しつよう)であり、今の...
野田正彰氏「過ぎし日の映え」(46)ローマの休日 情報化と狂気
挿絵・宮川優希 1987年から91年まで勤めた神戸市外国語大学は伝統のある、素晴らしい大学だった。大阪外大や京大で大学闘争に加わった教官が多く、港神戸の光を浴びて自由闊達(かったつ)に議論しあっていた...
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