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2024.05.17 08:30

路上喫煙対策 適度?緩い? 福岡市 規制「形骸化」の声【なるほど!こうち取材班 パートナー紙とともに】

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禁煙を呼びかける紙が何枚も張られたJR博多駅筑紫口側の道路(福岡市博多区)

禁煙を呼びかける紙が何枚も張られたJR博多駅筑紫口側の道路(福岡市博多区)

 「JR博多駅のすぐそばに路上喫煙者が集まる場所がある。主要駅の近くなのにモラルが低すぎる」。東京出身で福岡市在住の40代男性から、西日本新聞「あなたの特命取材班」にこんな投稿が寄せられた。路上喫煙を巡っては、渋谷区や世田谷区などが区内全域で禁止し、大阪市も2025年の万博開催に合わせて全面禁煙の方針を打ち出すなど、対策を強化する動きが広がっている。福岡市の対策を他都市と比較した。

 博多駅の筑紫口駅前広場から南側に延びる市道。市が指定する路上禁煙地区だが、4月の平日の午前10時前には少なくとも10人以上がたばこを吸っていた。中には吸い殻を側溝に捨てる人や、この道に曲がった途端にたばこに火を付ける人も。近くには禁煙を呼びかける紙が何枚も張られ、市が設置したスピーカーは自動音声で禁煙を呼びかける。投稿者は行政や警察に何度も相談メールを送ったが「呼びかけが形骸化している」と訴える。

他都市に先駆け
 福岡市は03年、東京・千代田区に続いて、路上喫煙を制限する罰則付き条例を施行した。中央区の天神、大名地区と博多駅周辺を指定し、罰則として2万円以下の過料を定めた。巡視員が指導した違反行為は20~22年平均で年間7188件に上るが、罰則の適用実績はない。

 現在、全国20政令市のうち、罰則付き路上禁煙条例を制定しているのは18市。うち17市の過料は千~2千円で、大半がその場で徴収する。福岡市の「2万円」は高すぎて徴収しにくいのだろうか? 路上禁煙を担当する防犯・交通安全課は「『指導すれば改善が見られる』などの理由で適用しない方針をとってきたため」としている。

公園は対象外
 取材班には福岡市中心部の喫煙マナーに関する投稿が複数寄せられており、その多くが公園に関するものだ。20年の健康増進法改正で屋内施設は原則として全面禁煙となったが、公園は対象外。対応は自治体によって分かれている。

 北九州市や広島市は禁煙地区内の公園も対象に含み、所定の喫煙スペースから離れて吸っている場合は過料を適用している。広島市は適用状況にばらつきが生じないよう、21年に灰皿からの距離などを内規で明確化したという。

 一方、福岡市は禁煙地区内でも公園は対象外。「公園は自由利用が原則で、吸う人も吸わない人も快適な環境づくりに努める」と説明する。

 また路上禁煙地区での禁止行為も、自治体により異なる。北九州市などは喫煙そのものが禁止だが、福岡市が禁じているのは歩行中と自転車走行中の喫煙。防犯・交通安全課は「禁煙地区でも迷惑にならないよう立ち止まり、灰皿を持って吸うようなケースは問題ない」とする。

強化予定なし
 厚生労働省の22年の国民生活基礎調査によると、喫煙者の割合は男性25・4%、女性7・7%でともに減少傾向が続く。それだけに路上喫煙者が目立ち、マナーにより厳しい目が向けられる向きもある。

 福岡市の対応は他都市より寛容にも見えるが、市の定点調査では、歩行者に占める喫煙者の割合は減少傾向にあり、17年以降は0・1%未満。市は取り締まりを強化する予定はなく、引き続き巡視や啓発に努めるとしている。(西日本新聞)


▼高知では
高知市も規制条例 罰金や指導の適用ゼロ
 高知県内でも高知市が1996年、条例改正で市中心部でたばこの吸い殻を含むポイ捨て行為に罰則を科したほか、2011年には歩きたばこ防止条例が施行されるなどしている。

 同市のポイ捨て禁止区域は東は九反田から、西は升形まで。南北は鏡川、江ノ口川に囲まれた範囲で、これにJR高知駅前の電車通りを加えた約1・8平方キロとなっている。罰金は5万円と厳しいが、担当する市新エネルギー・環境政策課によると、適用事例はゼロという。

 歩きたばこ防止条例は、高知駅や追手筋、中心商店街、市役所周辺が対象。道路や公園など公共の場所で、火の付いたたばこを歩きながら、または立ち止まって吸うなどの行為を禁じている。ただし「周りの安全が確認でき」「携帯灰皿を使って立ち止まって」いれば可で、加熱式たばこは「やけどや衣類を焦がすなど周囲への危険がない」ため対象外としている。つまり、たばこの煙(副流煙)よりも、火に着目した内容となっている。

 この条例も違反者に指導・勧告ができるが、こちらも適用事例はなし。いずれも“抑止力”を期待する内容となっている。

 市は年4回、播磨屋橋など市中心部の4カ所でポイ捨てされた吸い殻の数を調査しており、23年度は423本、22年度は394本、21年度は566本。11年の条例施行当初は月5万~6万本もの吸い殻があったそうで、少しずつマナーは改善していると言えそうだ。

 ただ、市には今も年に数件、ポイ捨てに関する苦情が寄せられており、播磨屋橋周辺など観光客が集まる場所で、吸い殻が多く見つかっているという。同課は「環境美化の啓発を続けていく」としている。(海路佳孝)



 県民・読者とつくる調査報道企画、高知新聞「なるほど!こうち取材班」(なるこ取材班)。連携する全国のパートナー紙の記事や県内の状況を随時掲載で紹介します。

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