2024年 06月01日(土)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2024.05.15 08:00

【認知症の増加】共生社会づくり加速を

SHARE

 高齢化が進む中、認知症やその予備軍といわれる軽度認知障害(MCI)の対策は、待ったなしである。それが改めて示された。
 政府が患者数の将来推計を公表した。2040年には65歳以上の高齢者のうち、およそ3人に1人が認知症またはMCIになるという。
 予防の一層の強化と、発症しても患者やその家族が安心して暮らせる共生社会の実現が急がれる。政府や自治体はもちろん、社会全体で取り組みを加速させたい。
 推計によると、25年の認知症の高齢者数は471万人。高齢者全体に占める割合は12・9%とした。MCIは564万人で15・4%。
 これが40年には認知症で584万人、MCIで612万人となる。率はそれぞれ14・9%と15・6%という。60年には認知症645万人、MCI632万人で、それぞれ17・7%と17・4%にまで増える見込みだ。
 認知症とMCIを合わせると、40年の患者数は計1197万人となり、3・3人に1人に達する。60年には1277万人に上り、2・8人に1人の割合となるという。
 誰もが認知機能の病になり得るといっていいだろう。大きな社会的課題として向き合う必要がある。
 ただし、認知症の人の推計については、前回15年の公表時より大幅に減少した。60年時点の人数は約200万人も減っている。
 認知症の発症リスクがあるとされる喫煙や食事などの生活習慣の改善が進んだことが考えられるという。状況の改善には啓発活動の拡大や、治療の研究強化が欠かせないことを物語っている。
 一方、MCIの推計は今回初めて公表された。過去との比較はできないものの、予防が鍵となるのは同じだろう。
 MCIは認知症に比べ生活に大きな影響はないものの、放置すると数年で認知症になる例があり、早期発見が重要とされる。適度な運動や栄養バランスの取れた食事などによって症状が改善される可能性も指摘されている。
 政府は19年に認知症施策推進大綱をまとめ、「予防」「共生」を柱に据えた。ことし1月には認知症基本法も施行され、「人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会の実現」を掲げている。
 基本法には、政策を総合的かつ計画的に策定し、実行する責務が国や自治体にあることを明記。国民も、認知症についての正しい知識や患者への正しい理解を深めることに努めるよう求めている。
 発症しても、本人やその家族が住み慣れた地域で安心して暮らしていくには、当事者に寄り添った施策が重要なのは言うまでもない。社会から孤立したり、家族が介護離職を余儀なくされたりするようでは、共生社会とは呼べないだろう。
 政府は基本法に基づき、今秋までに施策の基本計画をまとめる予定だ。財源をどう確保するかも含め、丁寧な論議で施策を充実させ、着実に実行することが求められる。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月