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2024.05.14 08:00

【与党政治改革案】危機感が乏しすぎる

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 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件が招いた不信感を払拭するには、抜本的な政治改革案が不可欠だ。自民、公明両党は政治資金規正法の改正案に大筋合意したが、この案を本当に「抜本改革」だと考えているのなら、あまりに危機感が乏しいのではないか。
 主な論点のうち、事件の温床になったパーティー券購入者の公開基準額については、現行の20万円超を引き下げるとした。5万円超を掲げる公明と、資金集めへの影響を懸念して10万円超が限界だとする自民は折り合わず、引き続き協議する。
 ただ、基準を下げたところで、パーティーの継続を前提としている。そもそも1990年代の政治改革で政党交付金が導入されて以降、企業・団体献金やパーティーを認めるのは「二重取り」と批判されてきた。与党案にその指摘を考慮する視点はなく、企業・団体献金の扱いに関しては言及すらしていない。
 政党から政治家個人に渡され、使途開示の義務がない政策活動費も「ブラックボックス」として国民から疑問視される。自民は党幹部に年間10億円前後を支出してきた。
 これについて与党案は、政党から支払いを受けた政治家が使途を報告し、党が政治資金収支報告書に記載するとした。だが、党単位で使途を大ざっぱに分類し、領収書もなく開示したとして、透明化を果たしたとするのは詭弁(きべん)だろう。
 ほかに、会計担当者らだけでなく政治家の責任も問う観点から、収支報告提出時に議員の「確認書」添付を義務付け、実質的な「連座制」とした。脱法的だとして批判が出ている政治団体間での資金移動についても、公開基準を設定した。しかし双方とも、運用に抜け穴的な要素を残した形となっている。
 総じて与党案は、「規正」を前進させるようで実は制度の曖昧さを確保し、不透明な金を残そうとしているように見える。重視すべきは国民の納得だ。それは額の多寡や性質を問わず、金の流れが明確になることであり、与党は国民の不信感を過小評価していると言わざるを得ない。
 裏金事件の当事者であるにもかかわらず、自民は当初、独自案の作成を見送る方針を示し、公明や野党の猛反発でようやく腰を上げた経緯がある。自民の後ろ向きの姿勢に引きずられるようなら公明の姿勢も問われる。両党の協議は続けられるが、公明から野党との協議を優先する声が出るのも当然だろう。
 岸田文雄首相は、与党案を「再発防止の観点から実効性ある案をまとめてもらった」と述べたが、共同通信の世論調査では79%が評価していない。これを数の力で押し切っては政治不信は逆に膨らむだけだ。
 野党側は、企業・団体献金やパーティーの禁止なども掲げる。自民は野党との協議に真摯(しんし)に臨まなければなるまい。政治資金絡みの問題で国政、国会が停滞する事態に国民はうんざりしている。問題が繰り返されないルールを今国会でつくり上げる必要がある。

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