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2024.05.01 08:00

【国スポの在り方】一度立ち止まって論議を

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 国民スポーツ大会(国スポ=旧国民体育大会)の在り方に見直しを求める声が強まっている。
 開催自治体の負担があまりに大きいためだ。全国知事会も状況を重く捉え、会長の村井嘉浩・宮城県知事が先月、記者会見で「廃止も一つの考え方ではないか」「白紙で論議した方がいい」と述べた。
 歴史も意義もある大型大会だが、人口減少や財政は厳しさが増しており、都道府県間の格差も広がっている。このまま続けるのかという疑問は当然だろう。
 主催団体の一つ、日本スポーツ協会も見直し論議を本格化させている。現時点で「廃止」はさすがに極論だとしても、改革は必至だ。いったん立ち止まり、丁寧に論議するよう求めたい。
 終戦間もない1946年に始まった大会は原則、各都道府県の持ち回りで開催され、現在2巡目。ことしから国スポに改称され、2035年には3巡目に入る。
 大会は各地に多くの競技に親しめる環境整備を促し、各種スポーツの普及や強化に大きく貢献した。だが2巡目が進むにつれ、さまざまな弊害も指摘され始めた。
 まず開催自治体の財政的、人的な負担の重さがある。全国から選手が集うため、新たな競技施設が整備される例が多いが、競技数が多いため経費は膨大になる。大会運営に求められる人員も相当な数に上る。
 22年大会を開いた栃木県は経費削減に努めたが、県や市町村が支出した施設整備や大会事業費は総額約829億円に達した。国からの補助はごくわずかだったという。人口や財政の規模が小さい開催地の負担感は相当大きいだろう。
 天皇杯(総合優勝)の獲得も開催地を悩ませてきた。競技の成績を点数化し序列化。開催地が天皇杯を手にするのが当然視されてきた。そのため、他の都道府県から実力のある選手を集め、成績アップを図る手法も慣例化している。
 その点で天皇杯至上主義に一石を投じたのが02年の高知国体だった。当時の橋本大二郎高知県知事は「何が何でも開催県が天皇杯を獲得するという考え方を前提としない」と表明した。
 施設整備や選手・指導者集めは、大会後も競技人口や競技力の向上につながった。ただ、一部には施設が有効利用されなかったり、選手・指導者が大会後に去ったりする問題が生じている。
 競技によっては、特に成年選手の間で大会の位置付けが相対的に低下。トップレベルの選手が出場しない傾向も強まっている。
 大会の意義はいまもあり、出場を目指して取り組んでいる選手は多い。だが、古くて新しい問題を放置して継続することは許されまい。
 各地の知事からは、競技ごとの分散開催や数年ごとの開催を求める声なども上がっている。各地の競技団体や選手の意見も参考にしながら、多くの国民に支持される次代の大会の在り方を探ってほしい。

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