2023.09.03 08:00
【燃油補助金拡充】出口戦略をしっかり描け
足元のガソリン価格は過去最高値を更新し、国民の負担感が増している。特に、公共交通機関が充実していない本県のような車社会ではなおさらだ。一方で補助金の長期化が財政を圧迫し、地球温暖化対策に逆行するとの異論もある。政府には出口戦略をしっかりと描いた対応が求められる。
ガソリン高が止まらない。経済産業省によると、レギュラーガソリンは全国平均で1リットル当たり185円60銭となり、統計が残る1990年8月以降で最高となった。県内でも189円となり、県西部で190円を超えたところもある。負担感は増すばかりだ。
背景には、ウクライナ情勢の影響に伴う原油価格高騰と、円安基調がある。政府は2022年1月に補助金支給を開始した。ことし1月から段階的に補助を縮小し、9月末の期限で終了する道筋を描いていた。だが、産油国が6月に減産の延長を決め、いったん落ち着いていた原油価格が再び上昇。補助の縮小も販売価格の上昇につながっていた。
燃油高騰は農漁業、運送業など幅広い業種の経営を圧迫する。政府が補助の延長・拡充にかじを切ったのも国民の負担増を意識したからだろう。7日から補助を拡充。基準価格の168円を超えた場合、185円までは超過分の30%(10月5日以降は60%)を補助し、さらに超えた分を全額補助する仕組みとした。
10月中に1リットル当たり175円の水準を見据える。ガソリンのほか軽油や灯油、重油も対象で、財源には予算の使い残しを充てるという。ガソリン税を軽減する「トリガー条項」は流通の現場に混乱が生じるなどとして凍結解除を見送った。
景気への悪影響を踏まえれば、対応が求められたのは確かだが、補助金による価格抑制は需給で価格が決まる市場の機能をゆがめかねない。あくまで緊急的な措置と考えるべきだ。石油元売り会社への補助金は国費投入がどこまで価格抑制につながったのかが見えにくいとの指摘もある。効果の検証が求められよう。
補助金支給は長期化するほど副作用も膨らむ。政府は近年、新型コロナウイルス禍と物価高対策に巨費を投じ、財政は急速に悪化した。普通国債の発行残高は19年度末の887兆円から23年度末には1068兆円に膨らむ見通しだ。いつまでも大盤振る舞いは続けられない。
地球温暖化対策に逆行する面もある。価格抑制を目的にした補助金も見方を変えれば、消費の下支えになるからだ。22年度はガソリンの国内販売が7年ぶりに増加した。政策のちぐはぐさは否めない。
今回の補助金延長で、正常化への出口が遠のいたことは確かだろう。慎重に道筋を探る必要がある。