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2023.06.15 08:00

【こども未来戦略】裏付けの議論を避けるな

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 「次元の異なる少子化対策」を打ち出しても、財源確保の具体策が定まらなければ説得力に乏しい。全ての子どもの育ちを支えるとの理念に徹し、実効性のある施策を積み重ねていくことが求められる。
 政府は「こども未来戦略方針」を決めた。2024~26年度の3年を集中対策期間と位置付け、年3兆円台半ばを追加投入する。
 児童手当の拡充が中心に置かれる。岸田文雄首相は、24年10月分から拡充すると表明した。
 減額や不支給となる所得制限を全廃するとともに支給対象年齢を引き上げ、第3子以降は増額する。さらに、16~18歳の子どもがいる世帯の税負担を軽減する扶養控除は見直しが検討される。
 ただ、子どもの年齢構成によっては第3子以降の加算がなくなる場合がある。また、所得次第では児童手当分を新たな税負担が上回ることがあり得る。手当拡充の印象を振りまくだけでは混乱を招きかねない。設計に即した丁寧な説明を通して理解を深めることが重要だ。
 対策は経済的支援のほか、育児休業給付の増額や子育て支援、サービスの拡充など多岐にわたる。多面的な対策が必要なのは間違いない。短期間での効果は望みにくいだけに、継続が大切だ。財政負担も大きく、検証を重ねて実効性を高めていくことが欠かせない。
 財源に関して政府は、経済成長を妨げて子育て世代の所得を減らすことがないように徹底した歳出改革に努めるとする。また、国民と企業が負担する公的医療保険など社会保険料に上乗せを想定する「支援金制度」の創設を掲げる。当面の不足分は「こども特例公債」で穴埋めする方針を打ち出した。
 首相は、こうした対応をとることで国民に追加負担を生じさせない考えを繰り返し強調している。だが、財源確保策の詳細は結論を年末に先送りしたことが示すのは、巨額予算を捻出する難しさだろう。
 支援金の上乗せ分は、少子高齢化に伴う保険料の伸びを抑制して相殺することを狙う。だが、社会保障の歳出削減には業界からの反発も根強く、簡単には進みそうにない。
 そもそも、財源を後回しにするようでは施策の安定性や継続性に疑問の目が向けられてしまう。岸田政権では、防衛費の増額を巡っても安定財源が定まらないまま予算規模が先走る危うさが指摘された。財政の健全性がゆがめば施策の柔軟性が失われるだけに警戒を要する。
 国会は会期末が近づき、衆院解散・総選挙が取り沙汰される。マイナスの印象を与えかねない国民負担の増額は回避したいのだろうが、財源を抜きにしては対策は進まない。
 首相は、少子化傾向を反転させるには若者人口が急減する30年代に入るまでが最後のチャンスだと訴える。そのために必要とされる施策に幅広く取り組まないといけない。財源問題は将来の負担増を警戒させる。若い世代の安心につながる対応が必要となる。

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