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2023.05.27 08:00

【電力料金値上げ】経営努力は十分だったか

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 四国電力を含めた大手電力7社が、6月1日から電気料金を抜本的に値上げする。歴史的な物価高が続く中で、さらに家計に大きな負担がのしかかることになる。
 ロシアのウクライナ侵攻や円安で燃料コストが高騰しており、やむを得ない面はあるだろう。だが、電力販売カルテルや顧客情報の不正閲覧など昨年以降明らかになった不祥事は、おごりや横並び意識が拭えない業界の経営体質をさらした。
 それだけに、各社が十分な経営努力をしたのか、厳しい目も向く。値上げ幅の大きさも含めて、すんなりと受け入れられないというのが多くの消費者の思いではないか。経営の効率化や透明性の確保が、業界に強く求められる。
 値上げされるのは一般家庭が多く契約する「規制料金」で、各社の平均値上げ率は15・9~43・4%。燃料の価格変動を反映させる調整制度を踏まえると、標準家庭の6月料金は5月より881~2771円上昇する。北陸電力、沖縄電力が2千円を超える値上げとなり、四国電力は1783円となった。
 燃料費の高騰で各社の経営が苦しくなっているのは事実だ。2023年3月期決算で大手10社のうち8社が赤字になり、赤字額は計6千億円を超えた。四国電力も過去2番目に多い228億円の赤字となった。
 こうした状況を踏まえ、東北、北陸、中国、四国、沖縄の5社が4月の値上げ実施を、北海道、東京の2社は6月の実施を申請していた。
 新料金を認可する政府の審査は、それなりに消費者目線を意識したものではあった。公聴会で消費者の反対意見が相次ぐ中、岸田文雄首相は審査の厳格化を指示。経済産業省は各社に経営効率化を求め、最近の燃料価格の下落傾向を反映させることで値上げ幅を圧縮させてきた。
 消費者庁は、4社が関与した電力カルテルや新電力の顧客情報の不正閲覧を巡り、料金が高止まりした懸念を指摘し、解明を求めた。
 ただ、値上げ幅は総じて負担感の重い水準となった。電力会社側から安定供給のために必要だと訴えられれば、最終的に消費者側は反論しにくいのが実情だ。そうした立場の優劣が出たと言える。
 だからこそ、電力会社側には真摯(しんし)な姿勢が求められたが、自由化の趣旨や公正な競争をないがしろにした不祥事で、逆に消費者の不信感を招いた。その責任は重い。政府は各社の経営を継続的に検証するとしている。厳格に対応するべきだ。
 値上げに対し、県内外で悲痛な声が上がる。これから特に注意が必要なのは酷暑対策だろう。エアコンの利用控えが深刻な事態につながらないよう目配りも必要だ。
 電力料金を巡っては、政府が負担軽減のため1~9月使用分の補助を実施している。継続には多額の財源が必要となり、打ち切れば家計がさらに圧迫される。「出口」対応の難しさが予想される中、限られた財源で必要な層に支援が届くような、きめ細かい対策の検討も急ぐべきだ。

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