2023.05.14 08:31
牧野標本の「美」と「技」 菅原一剛さん写真集「MAKINO 植物の肖像」 科学とアート融合
牧野富太郎の標本41点を撮影した菅原一剛さんの写真集「MAKINO 植物の肖像」。帯は昨年の本紙ラッピング紙面に使われた桜「センダイヨシノ」
高知県立牧野植物園は約5500点の牧野標本を所蔵している。その貴重な標本の中から同園の藤川和美研究員が41点を厳選した。あらゆる植物に関心を持った博士は、野生植物から園芸品種、さらには市場に出た野菜までも植物標本としている。藤川研究員はそうした植物全般を愛した博士への敬意を込め、今回の標本を選んだという。
撮影は牧野植物園で行われた。菅原さんは世界最高水準の1億5千万画素のデジタルカメラと高度なライティング技術を駆使して41点を撮影した。植物を固定するために貼られていたテープなどをデジタル処理で消去し、本来の植物そのものの形を写真で再現した。
その中の桜「センダイヨシノ」の標本写真は、博士生誕160年となった昨年4月24日付の本紙を包み込んで大きな反響を呼んだ。写真集にはセンダイヨシノを含む41点の牧野標本写真を収録している。
菅原さんは牧野標本の一つ一つを人の「肖像」のように捉え、その植物たち特有の個性と美しさにカメラを向けた。牧野標本の科学的価値と芸術としての美しさ。菅原さんは「アート&サイエンス」と写真集「MAKINO」を評している。(竹内一)
写真集「MAKINO 植物の肖像」は北隆館発行。A4変判・112ページ。6600円。高知新聞で使われた桜の標本写真は額装作品として高知新聞特設サイトで販売中。
ヒメアジサイ(東京都練馬区大泉、1946年)
コスモス(東京都練馬区大泉、1929年)
ユキワリイチゲ(東京都練馬区大泉、1952年)
コマツカサススキ(京都市上賀茂、1905年)
イロハモミジ(東京都練馬区大泉、1940年)
アオスゲ(東京都荒川区道灌山、1906年)
マナ(東京の野菜市場、1932年)
ミヤマキリシマ(長崎県雲仙岳、1934年)
■牧野標本は新たなボタニカル・アート、美しさと生命感がある 写真家・菅原一剛さんに聞く