2023.04.21 08:00
【スーダンの戦闘】即時停戦と邦人保護を
アフリカ北東部スーダンで正規軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の戦闘が激化している。日本政府は邦人の退避準備のため、週末にもアフリカ東部ジブチに航空自衛隊の輸送機を派遣する。
スーダンではクーデターや内戦が繰り返されてきた。2019年に長期独裁政権が崩壊して軍民共同統治が行われたが、21年に軍がクーデターを起こした。22年12月には軍と主要民主派勢力が民政移管に向けた枠組みで合意している。しかし連携してきた軍とRSFは統合を巡り対立を深めた。背景にはトップ同士の権力争いも指摘される。
停戦合意も報じられたが衝突は続いている。首都ハルツームの国際空港でも戦闘が行われている。双方が非難を繰り返し、戦闘の長期化が危惧される。世界保健機関(WHO)によると、死傷者は約3千人となり、さらに増えるとみられる。
在留邦人は大使館員を含め約60人という。邦人輸送に備え自衛隊機を待機させるジブチは、アフリカ東部ソマリア沖で海賊対処活動に従事する自衛隊が拠点を置いている。政府は邦人の安全確保へ先進7カ国(G7)など関係国と緊密に連携して対応する考えのようだ。
だが、各国の退避活動も戦闘の激化で難航が伝えられる。空港の使用に双方の了解を得るのは難しく、自衛隊機がすぐにスーダンに入ることは厳しいとみられる。市街戦で外出もできない状況のようで、救出は相当の困難が想定される。
退避支援のための自衛隊機の派遣は、21年には情勢が悪化したアフガニスタンで実施している。この際には現地派遣が遅すぎるなどの批判が上がった。米英などが軍用機で自国民や現地スタッフを退避させる中、日本大使館職員も英軍機で脱出することになった。また現地職員らは出国できなかった。
このため安全確認に関わる要件を緩和し、危険回避の対策を講じれば救出活動を行えるように法改正している。輸送対象も邦人から拡大した。有事を念頭に、国民や関係者の保護への即応性を高めた形だ。
もちろんそうした対策を進めることは必要だ。しかし、安全性の確保を怠ってはならない。派遣を目的化することなく、徹底した情報収集に基づく対応が必要となる。
停戦実現への取り組みも欠かせない。スーダンと国境を接するエジプトやアフリカ連合(AU)などが仲裁や調停に乗り出す意向を示しているが、実効性は不透明だ。ロシアの影響力も指摘される。G7の関与は見通せないが、さまざまな手だてを講じていきたい。
国連はスーダンの人口約4700万人の3分の1が人道支援が必要とみている。戦闘でさらなる悪化が想定される。周辺の情勢不安定な国への混乱波及も懸念される。国際的な支援体制を構築する必要がある。