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2023.03.23 08:00

【ウクライナ訪問】異例の行動を平和支援へ

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 連帯と支援を直接伝えた意義は大きい。国際社会の分断が進む中、停戦への環境を整えるとともに、復興に向けた役割を果たしていきたい。
 岸田文雄首相はウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問し、ゼレンスキー大統領と会談した。首相が紛争地となっている当事国に足を踏み入れるのは極めて異例だ。
 ロシアの侵攻当初から欧米を中心に各国首脳はウクライナを訪れ、結束をアピールしてきた。先進7カ国(G7)首脳は既にキーウを訪れている。特に2月のバイデン米大統領の訪問は首相の訪問意欲を刺激したに違いない。首相だけが取り残される形となり、5月のG7首脳会議(広島サミット)を控え、実現の思いが強まったはずだ。
 訪問案は何度か浮上し、今年1月にはウクライナ政府から訪問の招請を受けていた。安全確保が立ちはだかったが、訪問先のインドからの帰国予定を変更してポーランド経由でウクライナ入りした。
 ウクライナ侵攻はサミットの主要テーマとなる。議長国としてG7の結束を示し、議論を主導する責務を果たすには訪問の実績が欠かせないと判断したのだろう。
 共同声明は、戦争犯罪や残虐行為の不処罰はあってはならないとして、国際法に従って責任追及する姿勢を表明した。国際刑事裁判所(ICC)がプーチン大統領に逮捕状を出している。首相は会談に先立ち、民間人多数が虐殺されたキーウ近郊ブチャを訪ねた。戦争犯罪追及での結束は日本の立場を明確にした。
 首相はエネルギー分野などで新たに約4億7千万ドルの無償支援の供与を表明した。また北大西洋条約機構(NATO)の基金を通じた殺傷能力のない装備品3千万ドル相当の提供も伝えた。特に民生分野での支援を強めることで市民生活の困難を軽減したい。そのための日本の取り組みが重要となる。
 また首相は、G7広島サミットへのオンライン出席を招待した。ゼレンスキー氏は、サミットでロシアによる核脅威や原発占拠を取り上げるよう要請した。ロシアの核を振りかざす姿勢は認められない。
 首相はこれまでに、核兵器の惨禍を二度と起こさないように広島から世界へ発信したいと述べている。その役割は責務だ。同時に核軍縮と、核を含む米側の対日防衛をどう整合させるのか説明が欠かせない。
 声明は中国を念頭に東・南シナ海情勢への深刻な懸念にも言及し、台湾海峡の平和と安定の重要性も強調した。同じころ、中国の習近平国家主席がロシアを訪問し、プーチン氏と会談している。ウクライナ情勢への関与に意欲を見せるが、中ロの連携強化に警戒感も根強い。自国優先では信頼は高まりはしない。
 今回の首相の訪問では、外国を訪問する際に慣例となっている国会の事前承認を得なかった。情報管理のためという事情は理解するが、国会軽視につなげてはならない。国会への結果報告と質疑は誠実に対応する必要がある。

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