2023.03.02 08:00
【出生80万人割れ】社会全体で対応を急ごう
151万人台だった1982年と比べると、出生数は40年でほぼ半減したことになる。しかも国立社会保障・人口問題研究所の推計では、速報値が80万人割れするのは2033年と見込まれていた。
新型コロナウイルス禍の影響もあるだろうが、想定より10年超も速く進行している。このまま加速すれば、経済成長や社会保障制度の維持も難しくなりかねない。強い危機感を持って向き合う必要があろう。
折しも、少子化対策を担う「こども家庭庁」が来月発足する。岸田文雄首相は「異次元の少子化対策」や予算の「倍増」も掲げており、国会議論が活発化している。
政府や国会はこの機会を逃さず、対策を強化すべく論議を深めてほしい。もちろん政治だけの問題ではない。若い世代が安心して出産や育児ができるよう、社会全体で対応を急ぎたい。
日本は30年以上前から少子化の進行が指摘されていた。いま直面している危機は、過去に十分な対策を講じてこなかった証しである。
それでも年間出生数が120万人前後で推移していた1990年代生まれの男女が結婚や出産の適齢期を迎えている。少子化に歯止めをかけるには、今後10年ほどが正念場といわれるゆえんだ。
若い世代が結婚や出産、子育てに抱く不安を少しでも取り除いていかなければならない。経済面もその一つだろう。
厚労省の国民生活基礎調査では、低所得世帯は高所得世帯に比べ、子どもがいる割合が低いことが分かっている。所得の問題から結婚や妊娠を諦めている若年層が少なくないとみられる。
出産や子育てにかかる経費の公的支援の拡充は不可欠だ。物価高騰で国民生活が厳しくなっていることもあり、岸田政権の政策が注目されている。
ただ、首相は支出規模について一夜で国会答弁を修正。予算の財源も定まっていない。政策が迷走するようなことになれば、若い世代に安心感は与えられないだろう。
男性の育児参加や企業の意識改革も一層求められる。男女の産休や育休制度の充実はもちろん、子育てしながら安定した収入が得られる労働環境が欠かせない。
都道府県別の出生数では、高知県は前年比378人減の3897人と全国で最も少なかった。一方で、鳥取県は前年比2人減にとどまり、3945人の赤ちゃんが生まれた。
鳥取県は移住促進に力を入れており、若い世代の移住が出生数の維持につながっているとみられる。地方の人口減少の課題は厳しいものがあるが、諦めず、しっかりと政策を論議していきたい。