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2022.12.01 08:00

【防衛費「2%」】規模の先走りを危惧する

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 防衛費の予算規模ばかりが先走って、防衛力の整備の在り方が置き去りにされては本末転倒だ。財源の確保策も見通せない。憲法に基づく専守防衛の理念が形骸化しかねず、もっと議論を深める必要がある。
 岸田文雄首相は防衛費について、2027年度に他省庁の関連予算を合わせ、現在の国内総生産(GDP)比2%に達する措置を講じるように指示した。これまでにも防衛費の相当な増額と、あらゆる選択肢を排除しない方針を示してきたが、具体的な水準への言及は初めてだ。
 日本の安全保障環境は厳しさを増している。これを受けて、北大西洋条約機構(NATO)加盟国がGDP比2%以上とする目標を念頭に、増額要求が強まっている。外国からの攻撃を防ぐため相手国のミサイル発射基地などを攻撃する能力の保有さえ取り上げられる。
 防衛費はGDP比1%程度を維持してきた。その大きな転換であり、防衛の在り方を大きく変えかねない。脅威にいかに対処するのか、目指すべき防衛を明確にして冷静に積み上げていかなければ、なし崩しの増額となりかねない。防衛力整備が東アジアの軍拡競争につながらないようにすることも重要だ。
 日本の22年度の防衛費は5兆4千億円で、11兆円規模が必要となる。首相は防衛省の予算にとどまらず、研究開発や公共インフラ、サイバー、海上保安庁など他省庁予算を組み入れて対処する考えのようだ。安全保障の強化に政府全体で取り組む体制の構築をにらむ。歳出の純増額を抑える意図もあるだろう。
 23年度は財源に、特別会計の剰余金などを一時的に充てることが検討されている。だが、言うまでもなく安定財源が不可欠だ。継続的に維持できなければ整備に影響する。
 政府有識者会議は先ごろ、「国民全体の負担」が必要として増税を提起した。国債発行への警戒感も示した。一方、積極的な財政出動を求める勢力は増税を警戒している。財源を巡る攻防は思惑が交錯しながら、これから本格化する。
 首相は年内に歳出、歳入一体で財源を決定する方針を示した。財源問題を先送りしないという意思だろう。首相が決定へ向けて主導できるかが問われることになる。
 置き去りにされがちな財源論議を活発化させること自体は当然だろう。しかし、政府から十分な説明がないままで、防衛を巡る議論が深まっているようには思えない。
 世論調査では、防衛費増額の財源について、「防衛費以外の予算の削減」が35%で最も多く、続いて「増額の必要がない」が25%だった。物価高が生活を圧迫し、社会保障も安心には程遠い中で、増額には厳しい見方が示される。
 一方で、敵基地攻撃能力の保有を6割が支持した。北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の海洋進出など、危機感の高さの反映だろう。意識の隔たりは大きい。防衛力とその財源の議論を重ね、国民の理解を得ることが基本となる。

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