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2022.09.29 08:00

【日中正常化50年】未来志向の対話続けたい

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 日本と中国のこれからの関係を考える上で、いま一度、認識しておきたい両国間の誓いがある。
 「国交を正常化し、相互に善隣友好関係を発展させることは、両国国民の利益に合致するところであり、また、アジアにおける緊張緩和と世界の平和に貢献するものである」
 1972年9月29日、両国は国交正常化で合意。その際、日本の田中角栄首相と中国の周恩来首相が署名した共同声明の一節である。
 これにより日中は戦後の新たな関係を歩み始めた。きょうがその50年の節目になる。
 両国はその6年後、日中平和友好条約も締結した。主権や領土保全の尊重、不可侵、平等などを前提に「両国間の恒久的な平和友好関係を発展させる」と明記した。
 共同声明には中国が日本への戦争賠償請求を放棄することも盛り込まれた。終戦から27年。中国の国民感情からすれば、簡単ではなかっただろうが、戦後、民間による熱心な日中交流の動きがあり、政治も対話を積み重ねて実現した。
 未来志向に立った関係再構築といっていいだろう。その後、日中交流は大きく発展した。
 数多くの日本企業が中国に進出し、中国の経済発展を後押しした。中国の豊かな労働力や日本向け輸出が日本企業や日本人の生活を支えた。往来が盛んになり、特に中国からの訪日客は50年前には想像もできなかった規模に増えた。
 ところが近年、政治的な関係がぎくしゃくしている。背景には米中貿易摩擦もあるが、中国による海洋進出やウイグル族への人権侵害、香港・台湾問題などが大きい。
 経済発展により影響力を増した中国は強引な政策を取るようになった。日欧米などはそれを批判し、中国は「内政干渉」だと反発しているが、国際平和や人権、民主主義を脅かす行為は許されない。
 特に最近、中国は台湾への軍事的挑発を続けており、侵攻を懸念する声が高まっている。そうでなくても軍事大国化する中国への警戒感は相当強い。ロシアや北朝鮮の動向も目が離せない。
 日本政府は防衛費の増強を進め、日米は同盟の一層の強化を図ろうとしている。このままでは東アジアの緊張が高まり続ける悪循環に陥りかねない。だからこそ日中は平和友好関係を再確認したい。
 50年前の共同声明やその後の平和友好条約では、両国は互いに「紛争を平和的手段により解決し、武力や武力による威嚇に訴えない」「アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではない」趣旨を誓った。それを忘れてはならない。
 いま日中の間に求められるのはやはり、未来志向で対話を続けることだろう。数年来、首脳会談も少ない状態だが、対話が不足していては良好な関係は維持できない。
 両国は末永い友好を誓い合った隣国同士である。歴史の重みを忘れずに、これからもその関係を保っていきたい。

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