2022.07.10 08:32
【2022参院選 きょう投票】「岐路」に責任ある選択を
ロシアによるウクライナ侵攻は長期化の様相を見せ、欧州のみならず東アジアの安全保障環境にも影を落としている。2年半に及ぶ新型コロナウイルス感染症との闘いは選挙戦終盤に感染がまた急拡大し、「第7波」への懸念が強まっている。
これらに伴うエネルギー資源価格や原材料費の上昇、円安などに起因する物価高騰は先行きが不透明なまま、家計や企業を直撃している。
国民生活や国の在り方は、さまざまな面で岐路に立っていると言ってよい。このまま岸田政権にかじ取りを託すのか。野党勢力に力を与えて新たな道を探るのか。主権者として責任を持って選択したい。
選挙戦は物価高騰対策を巡る論戦が激しくなった。
与党は政府が取り組んできた燃油価格の激変緩和措置の継続や、電気・ガス料金の上昇対策などを主張した。野党も家計支援を前面に打ち出し、消費税減税や現金給付、年金削減の中止などを訴えた。
しかし、財源の確保や、賃金の上昇を含め物価高に強い経済を目指す議論は十分だっただろうか。各勢力が訴える政策の効果や将来像を吟味して判断する必要があろう。
安全保障対応も問われた。自民党は抑止力向上が必要との観点から、これまで国内総生産(GDP)比1%が目安とされてきた防衛費の2%以上への増額も念頭に置く。
与野党とも防衛力強化に触れる主張は目立ったにせよ、総額ありきの議論を疑問視するなど各党にも温度差がある。むろん、抑止力より平和外交に軸足を置く政党もある。
与野党の一部には、防衛政策の基本方針である「専守防衛」の見直し論も浮上している。憲法改正に前向きな勢力が改憲発議に必要な3分の2以上の議席を維持するかどうかは今後の議論にも関わろう。
新型コロナ対応も喫緊の課題であり続ける。不安が依然大きい中、感染防止と経済再生のバランスをどうとるか。これほど政治の判断が生活に直結してきた問題もない。各党の対策を見極めたい。
ほかにも社会保障の在り方や原発政策、人口減に悩む地方の振興策など、有権者それぞれが心に持つ「争点」があるに違いない。
気になるのは投票率だ。参院選が徳島県との合区選挙区になった2016年に高知県内の投票率は過去最低、全国最低の45・52%に沈んだ。前回19年も46%台の低水準。今回も低投票率が懸念されている。
選挙終盤に遊説中の安倍晋三元首相が銃撃され死亡した。言論による民主主義の根幹である選挙が、暴力で妨害されたことに憤りを覚える。
各党各候補の言論を冷静に踏まえて、自らの意思を表示する1票を投じたい。自らの生活や国の将来像を左右する重要な選挙が「お任せ民主主義」に陥らぬようにしたい。