2024年 06月14日(金)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法
県体写真

2022.04.30 08:00

【香港行政長官】自由の制約 さらに懸念

SHARE

 香港の統制は強化され、市民の自由がさらに制約を受けることへの懸念が高まる。
 任期満了に伴う香港行政長官選挙は、立候補を届け出たのは李家超前政務官だけだった。5月8日の選挙は李氏の信任投票となる。投票権を持つ選挙委員の過半数から推薦を受けているため当選は確実だ。
 行政長官選挙は一般市民に投票権はなく、親中派がほぼ独占する選挙委員会の委員だけが投票する。立候補も選挙委員の推薦が必要で中国指導部の支持が事実上必要となる。
 警察出身で、民主派への強硬姿勢で知られる李氏は、中国の習近平指導部が支持する「唯一の候補者」とされる。多くの選挙委員は李氏推薦を表明し、習指導部への忠誠を示した。一方で対抗馬とみられた有力政治家らは立候補を断念した。
 李氏は政府治安トップの保安局長として、2019年の「逃亡犯条例」改正案を巡る反政府デモを厳しく取り締まった。また香港国家安全維持法(国安法)が成立すると民主派摘発を強化し、対中批判を続けた香港紙を廃刊に追い込んでいる。こうした功績が中国政府に認められ、政務官に昇格していた。
 習指導部が統制強化による安定を重視する中で、行政長官の選挙にも中国の意向の反映が強まった。元治安トップが就任すると民主派への締め付けが一段と強まることが想定される。民主活動家が「香港人にとって悪夢だ」と表現する状況だ。
 林鄭月娥行政長官は、選挙制度の民主化を求めた大規模デモ後に初めて行われた行政長官選挙で当選した。中国が選挙戦に介入したとされる。2期目を目指すとみられていたが、再選不出馬を表明した。
 中国指導部の選挙方針を受けての対応だろう。19年のデモへの対応に業を煮やした形で習指導部は直接介入し、国安法の導入につながった。新型コロナウイルス感染が拡大し、中国本土で「ゼロコロナ」政策を堅持する中、抑え込みに失敗したことも影響したとみられている。
 また市民側にも、林鄭氏が社会の混乱を招いても中国指導部の意向に従い、社会への統制を強化してきたことに不満が強かった。
 香港の「一国二制度」は形骸化が進んでいる。昨年末の立法会(議会)選挙は、親中派が議席をほぼ独占した。「愛国者による香港統治」を求める習指導部が主導した制度で行われ、民主派は事実上排除された。だが、直接選挙枠の投票率が最低だったことに、この選挙に対する市民の拒否感が表れている。
 民主的な手続きが損なわれ、香港の高度の自治が弱体化することに国際世論の批判も強かった。しかし中国政府は選挙の正当性を主張し、「内政の問題」との姿勢を崩さなかった。行政長官選挙も統制重視の姿勢を鮮明にした。
 中国経済の下振れ圧力が強まる中、こうした対応は香港の国際金融センターとしての地位も変質させてしまう。強硬姿勢ばかりでは国際社会の信頼は高まらない。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月