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2022.04.27 08:00

【仏大統領】EU結束へ役割果たせ

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 フランス大統領選で中道の現職マクロン大統領が再選を決めた。現行の親欧州連合(EU)路線や、ウクライナに侵攻したロシアへの対応を国民が支持したことになる。
 決選投票は前回2017年選挙と同じく、極右政党のルペン氏との争いだった。ルペン氏は反EU、親ロシアの姿勢で知られる政治家だ。そのため、選挙結果に欧州や米国など西側諸国も安堵(あんど)している。
 ただルペン氏は今回、得票を大きく伸ばした。国民に社会不安や分断が深まった証しだろう。
 国際社会で存在感のあるフランスの国政の行方は、EUの安定や地球温暖化対策などの国際協調にも影響する。ウクライナ危機で国際秩序や世界経済が混乱しているいまは、なおさらだ。
 マクロン氏にはそれを改めて認識してもらい、2期目のかじ取りに当たってほしい。
 選挙戦はロシアがウクライナに侵攻し、激しい戦闘が続く中で行われた。マクロン氏はその暴挙に対し、日米欧と連携してロシアへの経済制裁に踏み切るなど、厳しい政策を取ってきた。
 だが、侵攻と制裁によって、フランスでも燃料費や農産物価格などが高騰。コロナ禍による経済や生活の疲弊にさらに追い打ちをかける結果となった。
 ルペン氏はマクロン氏を批判。20代の所得税免税や、最低賃金の引き上げなど大衆迎合的な政策を掲げた。決選投票の得票率はマクロン氏約59%、ルペン氏約41%。それぞれ約66%、約34%だった前回に比べ、差が縮まった。大統領選の極右候補としては過去最多の得票という。
 ルペン氏はロシアのプーチン大統領の「盟友」といわれ、前回選挙ではロシアの銀行から資金貸与を受けていた。本来なら支持を失ってもおかしくないが、逆に伸長した。
 投票率が過去2番目に低い約72%だった事実も無視できない。極右には投票したくないが、マクロン氏にも投じたくない。そんな有権者の不満が見て取れる。
 とはいえ、フランスで大統領が再選されるのは故シラク氏以来20年ぶり。国民が現在44歳の若きリーダーに国政をもう1期託した意味は大きいはずだ。
 マクロン氏は再選に当たり、「極右に投票した人々の怒りに対する答えを見いださなければならない」と強調した。6月には総選挙がある。マクロン氏を支える与党連合が多数派を維持できるかどうかも今後の焦点になる。
 欧州では数年来、移民問題などで自国第一主義的な政治勢力が強まり、各国で国民分断の危機が指摘されてきた。英国のEU離脱も招いた。そこへ加わったコロナ禍やウクライナ侵攻。ロシアに暴挙をやめさせ、世界経済を安定させるためにも国際社会は結束が欠かせない。
 フランスはEUのリーダー国の一つだ。特にロシアとは良好な関係を保ってきた歴史がある。マクロン氏が果たすべき役割は大きい。

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