2022.04.16 08:00
【NATO拡大】侵攻が加盟意欲を高めた
フィンランドとスウェーデンがNATOへの加盟に意欲を示した。ロシアと約1300キロの国境を接するフィンランドのマリン首相は、加盟しなければ安全の保証が得られないとして、数週間以内に申請の是非を決定する考えを表明した。
スウェーデンのアンデション首相も早急に判断する意向を明らかにした。ともに6月にも加盟申請を行うとの見方が出ている。
フィンランドはロシアとスウェーデンに挟まれ、その支配を受けてきた。帝政ロシアの崩壊で独立を果たしたが、第2次大戦でソ連に国土の1割強を奪われている。戦後は軍事的中立を貫き、NATO主導の国際平和協力活動に参加するがNATOには加盟していない。スウェーデンも中立の立場をとる。
その北欧2国が加盟へと動くのは、非加盟のままでいる危険性が強く意識されているからだ。世論は加盟支持が強まっているという。
NATOは集団防衛義務を定める。加盟国が攻撃を受けた場合は全加盟国への攻撃と見なし、武力を含む必要な行動を直ちに取る。その抑止力への期待が高まる。
東西冷戦時のソ連の脅威に対抗するために12カ国で発足したNATOは、冷戦終結後は東欧諸国の加盟が相次ぐ。現在は30カ国体制の軍事同盟となっている。
ロシアのNATOへの対抗意識は強い。プーチン大統領は、米国はNATOを拡大しないと約束しながら、東方拡大を続けてきたと反発している。冷戦終結後はNATOは欧州域外での任務も行ったが、クリミア問題が激化したことで欧州防衛を再び本格化させてきた。
北欧2国が中立政策の転換へ動くことを受け、ロシアは両国に対して核兵器を含めた軍備を強化すると警告している。両国が加盟すると、NATO側と接する国境の長さが2倍になると指摘し、フィンランド湾での軍艦展開にも言及した。
フィンランド政府は、外交と安全保障に関する報告書で、NATOに加盟申請すればロシア国境に近い地域で緊張が高まり、それへの対処が必要になるとの認識を示した。警戒は怠れない。
ロシアは「自衛」を名目に、ウクライナの主権を武力で踏みにじっている。自らが招いた緊張をさらに強め、国際社会をどう喝するようなことがあってはならない。
NATO拡大を望まないのであれば、挑発するような行動を直ちにやめることだ。自らの姿勢が、かえってNATO拡大の勢いを強めていることを認識する必要がある。
まずはウクライナとの停戦を急ぐことだ。停戦交渉は停滞し、戦闘の長期化が懸念される。市民の犠牲を増やさないよう、国際社会は多方面からの関与を続けたい。