2022.02.22 08:39
また老舗が...高知市の明文堂書店2/23閉店 県内本屋20年余で半減、大型店やネット影響
「お客さんに泣かれるし自分らも泣きゆう」と話す本久雅章さん・清子さん夫妻(高知市瀬戸東町2丁目の明文堂書店)
昭和28年ごろ、播磨屋橋付近にあったころの明文堂書店(本久さん提供)
県書店商業組合(五藤栄一郎代表理事)によると、2021年12月末で県内の書店数は85店舗ほど。ただ、このうち配達など外商専門の書店もあり、五藤代表理事は「実際に店頭で本を売っているのは60店舗くらいじゃないか」。背景は大型書店の進出やネットの書籍販売が広がったことだという。
厳しい状況は、明文堂書店にとっても例外ではなかった。
雅章さんによると、父親の晴一さんが終戦後、播磨屋橋の横で書店兼雑貨店として創業。播磨屋橋の西側に移転後、国際ホテル高知(旧・ホテルニュー高知)の1、2階に店を構えると、多くの人でにぎわった。
「昭和のバブルの頃はもうかりよった」と雅章さん。本店のほか瀬戸、高須、帯屋町と三つの店を出した時期もあり、「大人はとにかく本を読みよった。クリスマスには子どもへの本のプレゼント、学生は参考書。百科事典もよう売れたねえ」と振り返る。
その後、徐々に店を減らし、2005年には入居するホテルの閉鎖に伴い本店を閉店。現在は瀬戸地域唯一の書店として、量販店内の10坪のスペースで妻の清子さん(77)と「ほそぼそと」営業を続けてきた。
客は買い物帰りのお年寄りが中心だ。一昨年、漫画「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」が空前のブームとなり、どの書店でも品切れ状態だった時も「ここは全巻そろうちょった」。雅章さんは「返品しようと思いよったら、店に来た学生さんが『ここにあるやんか!』と驚いちょった。そればあ若い人は来んかったねえ」。
今年に入って常連客らに閉店の報告をすると、「やめられたら困る」と惜しむ声が次々と寄せられたという。常連客の岩松久美子さん(82)は「さみしいし、都合が悪い。これから本は行きつけの雑貨屋に注文するけど、そこもいつまで続くか…」。
清子さんは「正月以外は毎日、店に立ってきた。閉店の日が迫ってくると涙が出る」。雅章さんは「大手やネットには負けるわね。生まれた時から本に触れてきて、本で食べてきた。お客さまには感謝しています」と感慨深げに話した。
五藤代表理事は「高知市内を中心に踏ん張っている書店はまだあるが、今後も町の本屋は減っていくのではないか」としている。(石丸静香)