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2022.02.02 08:00

【広島買収事件】受領の責任問うのは当然

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 2019年7月の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、東京第6検察審査会は、現金を受領したとして公選法違反(被買収)容疑で告発され不起訴となった地元議員ら100人のうち、35人を「起訴相当」、46人を「不起訴不当」と議決した。
 選挙に絡む買収事件は、民主主義の根幹をなす投票行動を金銭でゆがめる極めて重大な問題だ。買収側はもちろん、受け取った側も政治不信を増幅させた責任は大きい。
 受領側の刑事処分を一律に問わない東京地検特捜部の判断は、有権者である市民の感覚からかけ離れていたと言える。特捜部は厳正な姿勢で再捜査に臨む必要がある。
 東京地裁は昨年6月、河井克行元法相に懲役3年、追徴金130万円の実刑判決(確定)を言い渡した。判決は、元法相が妻の案里氏(同法違反罪で有罪確定)の当選を目指し、100人に計2870万円を配った。案里氏はこのうちの4人に160万円を配ったと認定している。
 特捜部は昨年7月、受領側の99人を起訴猶予、残る1人は死亡による不起訴とした。元法相との関係や、強引に現金を提供された状況などを考慮したという。
 ただ、受け取った状況は100人それぞれ異なる。それを反映しない一律不起訴に不自然さは拭えない。検察の意に沿う証言をすれば刑事責任を問わない、違法な司法取引ではないか。そんな疑念も生じさせた。
 特捜部は河井夫妻の立件を最優先にしたのかもしれないが、少なくとも判断に緻密さを欠いた。受領側も罪に問うと規定する公選法の公平性をゆがめるとの見方もあった。
 検審はこの一律不起訴に疑問符を突き付けた格好だ。受領者が全く処罰されないのは「現金受領が重大な違法行為であることを見失わせる恐れがある」という指摘には説得力があろう。
 議決書によると、受け取った金額の多寡や公職に就いたままかどうか、返金や寄付を行ったかを検討。受領者ごとに悪質さや事件の重大性の認識などを判断したようだ。
 特捜部は計81人を再捜査することになるが、こうした疑念を重く受け止めるべきだ。起訴相当の35人は改めて不起訴となっても、再び検審が「起訴相当」と議決すれば強制起訴される。国民が納得できる丁寧な捜査を求めたい。
 買収原資の解明もなおざりにはできない。岸田文雄首相(自民党総裁)は、検審の議決を受け「党が既に説明している」との見解を示した。果たしてどうか。
 自民党は昨年9月、記者会見を開き、党が交付した1億5千万円は買収原資ではなかったと関与を否定した。だが、説明は河井氏側が作成した資料に基づき、裏付ける証拠や党独自の調査もなかった。客観性は極めて乏しく、説明責任を果たしたとは言いがたい。
 買収事件で問われているのは政治の在り方にほかならない。自浄作用が働かないなら、いつまでも国民の疑念を引きずることになる。

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