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2022.02.01 08:00

【ミャンマー1年】民政復帰へ対話を探れ

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 ミャンマー国軍によるクーデターからきょう1日で1年になる。
 民主化を求める市民の抗議デモに対する治安当局の実力行使などによる死者は人権団体のまとめで約1500人に上る。一方、民主派内からも武装闘争が打ち出され、国軍関係者らが殺傷されている。双方が暴力を即時停止しなければならない。
 経済活動は停滞し、失業率の増加など社会不安に覆われている。法の支配を軽視する国軍は正統な政権になり得ない。選挙で示された国民の強い思いを受け止め、早期の民政復帰が求められる。
 民主派指導者アウンサンスーチー氏=軟禁中=が率いた国民民主連盟(NLD)は2015年の総選挙で圧勝した。スーチー氏は事実上の政権トップに就き、20年の総選挙でも勝利を収めた。しかし国軍は大規模な不正があったと主張し、クーデターで政権を転覆させた。
 スーチー氏を徹底排除する姿勢は鮮明だ。国軍は司法を支配下に置く。スーチー氏にはこれまでに、社会不安をあおった罪などで計6年の禁錮刑が言い渡された。国軍トップのミンアウンフライン総司令官は一部の減刑を指示したものの、ほかにも全てが有罪になると計100年以上の禁錮刑が科される恐れがある。
 国軍は自らに都合のよい政権の樹立に突き進んでいる。NLDによると500人近くの関係者が拘束されており、影響力の一掃に力を入れている。国軍側は来年8月までに行う予定の総選挙にNLDの参加を認める意向を示すが、それで選挙の公正が保たれるとは言い難い。
 治安部隊から発砲や暴行を受けてきた抗議デモは、最近は少人数でゲリラ的に行われるようになったという。そうした中で、国軍車両が若者らのデモ隊に突っ込んで死傷者がでる事件も起きた。弾圧をやめる気配はうかがえない。
 これに対し民主派が設立した「挙国一致政府(NUG)」は武装蜂起を呼び掛けた。国軍は徹底的に抑え込む姿勢だ。また国軍と少数民族武装勢力との衝突も激化し、人道支援に支障がでている。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国も一枚岩ではなく、仲介は進んでいない。昨年4月には暴力の即時停止や特使派遣で合意した。しかし履行されず、ASEANは10月以降の首脳会談から国軍トップを排除している。それでも軍政は強硬姿勢を崩していない。
 議長国カンボジアのフン・セン首相が打開へ動き、国軍は少数民族武装勢力に年内停戦を表明したが、実効性は不明だ。市民への弾圧を隠す方便との見方さえある。
 経済は大幅なマイナス成長に陥ると予測される。海外からの投資は止まり、都市再開発の中断が目立つ。国民生活の苦境が強まっていることを真剣に受け止める必要がある。
 日本は歴史的、経済的なつながりから独自のパイプがあるとされるが、目立った進展はうかがえない。対話の糸口をつかむために、さらなる外交努力が求められる。

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