2021.08.27 08:36
長雨でコメに甚大被害 高知県内、野菜も品薄で高騰
収穫が遅れ、青い芽が出た稲穂(いずれも南国市前浜)
8月に降り続いた雨の影響で、高知県内のコメのわせ品種に甚大な被害が出ている。たわわに実った稲穂が、収穫が遅れるうちに芽を出してしまう「穂発芽」などの被害額は、県の23日までの集計で4666万円に上り、過去20年で最悪となった。露地野菜も実が落ちるなど被害が続出し、全国の品薄とも相まって価格が上昇している。
二期作が盛んな香長平野。南国市南部の前浜地区の水田では、ようやく輝きだした太陽の下、刈り取りの遅れた稲穂が見渡す限りべたっと寝ている。
「こればあやられたのは30年で初めて。今年は梅雨入りも早く、極わせに病気も出ていたのに。収入がうんと減りそうで不安」
12ヘクタールの水田でコシヒカリを育てる池正人さん(57)が、絡みついた稲を解きながら肩を落とす。11日に刈り取りを始めるつもりだったが、その日に降りだした雨は23日までやまなかった。
2週間のうちに、倒れて水に漬かった稲穂の一粒一粒から、白いひげのような芽がひょろひょろと。青々と育って、地面に根を張っている所もある。
長雨のうちにほぼ全ての稲が倒れた水田
市農業委員会がドローンを飛ばして確認したところ、市内ほぼ全域の約400ヘクタールが未収穫のまま。「衝撃的だった。例年なら二期作目の植え付けを終えているころ。被害がどこまで広がるか…」
南国市後免では、収穫期と重なる11~23日に平年の2倍を超す計804ミリの雨量を観測。高知市の計749ミリ、宿毛市の計508・5ミリも2倍超、室戸市佐喜浜の計1007ミリは3倍を超すなど、軒並み記録的な長雨となった。
コメは雨だと、機械で刈り取りができない。熟れた穂が長く水に漬かると芽が出て品質が損なわれる。県の集計では、この「穂発芽」と、冠水による変色や倒伏を合わせた被害は、南国市と高知市、安芸市などで過去最大規模の計732・15ヘクタールに及ぶ。
穂発芽を起こしたコメは、等級が3等に落ちることが多い。JA高知県によると、1袋30キロ当たり500円ほど安くなる。「数百万円単位で収入の減る農家が県内で広く出そうだ」と懸念する。
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県内野菜も、露地のオクラやシシトウ、雨よけハウスのトマトの花や実が落ちるなどの被害が93・03ヘクタールで発生。ハウスや堰(せき)の破損などを含めた農業被害の総額は2億3454万円に上る。
長雨による生育不良は全国の産地で起きており、県内のスーパーではお盆明けから急激な品薄と価格上昇が続く。高知青果市場(高知市)によると、県内の入荷量は、レタスやキャベツなど葉物を中心に例年の10%減。相場は1・3倍で推移しているという。
「現状は全国で野菜の奪い合い」とはサンシャインクレア店(同市北本町3丁目)の店長。店の野菜全般の価格は例年より3割ほど高いという。
「特にレタスやネギは、入荷が発注量に満たない時もある。しかも、店には並べられない質のものが交じる率も高い。値上げは申し訳ないが…」
県内では今、ナスやピーマン、キュウリなど、園芸の主力作物の植え付けが進む。県担当者は「苗が育った夏場の日照不足が心配。今後の生育に悪影響を与えなければいいが」と気をもむ。
高知青果市場の担当者は「これから台風も来る。9月いっぱいは野菜の高値が続くだろう」とみる。(宮内萌子)