2021.06.20 08:34
【ドローン動画】土佐鳥瞰紀行(47)双名島(中土佐町)鬼が運んだ夫婦岩
灯台のある沖島は「弁天島」、陸寄りの元島は「観音島」と呼ばれる。カツオ一本釣り漁船の出漁時には島に手を合わせ、大漁と安全を祈るという。
おとぎ話では、二つの島は鬼ケ島の鬼が持ってきたと伝わる。その昔、暴風雨のたびに港が荒れて困っていた久礼の人々のために、鬼が鉄棒の両端に大岩を突き刺してここまで運んできた。力を使い果たした心優しい鬼は「おおの」と言いながら海に沈んだ。だからこの地の集落は「大野」と呼ばれるようになった。
2島はともに下半分はむき出しの岩肌が波を砕き、上部は木々が青々と覆う。荒々しさと優しさを備えて並ぶ〝夫婦(めおと)岩〟。大正時代には歌人、大町桂月(高知市出身)が「感嘆に堪えず」と褒めたたえ、歌も詠んだ。
人ならばうれしからまし二名島(ふたなじま)二つならびて萬代(よろずよ)までも
島をつなぐ道からは太公望が釣り糸を垂れ、「朝5時からやりよるけんど、釣れんなあ。簡単に釣れてもつまらんけどね」とにっこり。地域に愛された双名島に朝日が昇る。(佐藤邦昭)