2021.06.07 08:36
呼吸難抱え白球追う 高知・大方中野球部岩村さん、酸素ボンベ着け公式戦
自発的な呼吸が浅くなる「中枢性低換気症候群」。無意識下の睡眠時などに息を吸わなくなり、低酸素血症などを引き起こす可能性がある。小児慢性特定疾病に指定されており、治療法は見つかっていない。
岩村さんは幼い頃から、常に酸素ボンベを手放せない生活を送ってきた。学校には母親の浩美さん(47)が欠かさず付き添ってケア。通常の授業は机の脇に大型ボンベを据えて受けていたが、手足に軽度のまひもあり、体育は中学入学まで休みがちだったという。
そんな生活が一変したきっかけは、2017年3月、40年ぶりに選抜高校野球大会へ出場した中村高校野球部だった。当時の女子マネジャーが親戚で、父親の龍志郎さん(51)も野球部OB。妹を含め家族4人が甲子園で応援し、大舞台の熱気を目の当たりにした。
「その時のプレーがすごくかっこよくて、自分もやりたくなった」。当時10歳の岩村さんは衝撃を受け、中学では野球部を希望した。主治医も家族も反対したが、岩村さんは譲らず。浩美さんは「聞き分けは良いのに、野球だけは折れなかった」。その熱意が周囲の心を動かし、晴れて野球部員となった。
激しい運動時も、意識しないと深く息を吸い込めないため、周囲の部員が「深呼吸、忘れないで」と声を掛けてきた。体力、技術とも伸びて4月からレギュラー入り。6日には、県中学総合体育大会(総体)幡多地区予選の初戦で、宿毛市の東中と対戦した。
「7番・右翼」で出場した岩村さんは三回裏、振り逃げで一塁へ。さらに盗塁を試みたが、惜しくも失敗。チームも0―10のコールド負けを喫した。
岩村さんは「出塁して安堵(あんど)したけど、けん制で焦ってしまった」と悔しさをにじませつつ、「次は夏の県選手権。最後の大会なので、もっと塁に出られるよう練習したい」。好プレーを誓っていた。(河本真澄)