2021.06.04 08:40
香南市の旬をスイーツに 菓子工房「なっちゃる」10年、古里の恵みにこだわり
大阪の製菓専門学校を卒業後、19歳で菓子作りの道へ。いずれは地元に戻ろうと思いながら製菓会社やホテルなどで腕を磨き、2011年春、勤めていたレストランの閉店を機に帰郷、独立した。
実家の車庫を改装して工房に。「ここでショートケーキを作っても面白くない。地元の旬を感じられるものを」と、農家の両親が育てる新鮮な果物を素材にした。
まず手掛けたのが、乾燥させた山北ミカンを透けるほど薄くスライスしたチップ。味付けにテンサイを用い、近くの直販所「あぐりのさと」やイベントなどで売り始めると、たちまち評判になった。
モットーは「余計なものは極力加えない」。「今年のはちょっと酸いね」と常連客に言われるほど、自然が生み出す味にこだわっている。
自家製のレモンやキンカンのほか、山で採れたヨモギ、近くの人が持ち込んだ不ぞろいの野菜や果物も活用。家族で試食して商品化したレシピは、シフォンケーキやババロア、ジュースなど100種類以上に上る。食材は8割が香南市産。地元では「なっちゃるのなっちゃん」として親しまれている。
独自の店舗は持たず、年に1日だけ工房横の庭で「お山のおうちカフェ」を開く。今年は新型コロナウイルスを考慮し、5月下旬に2日間オープン。タケノコとワラビの山菜ピザ、黄金柑ジュースなど、この時しか味わえない限定メニュー15品を用意し、訪れた住民らが堪能した。
日頃から直販所などで「なっちゃる」の品々を買い求めている30代女性は「優しい味ばかりで、身の回りにおいしいものがたくさん育っていると感じられる」とにっこり。
柳本さんは「これからも地元食材のよさをお菓子に込め、ごとごととやっていきたい」と話していた。(深田恵衣)