2021.05.02 08:39
土佐鳥瞰紀行(44)久通(須崎市)野鳥の歌声、潮騒に乗せ
木々の茂る山越えのくねくね道を進む。途中、ヤマドリとハトに〝道案内〟してもらった。
坂道を上りきると、突然山が切れ、太平洋が眼前にあらわれる。眼下をのぞくと三方を山に囲まれた小さな集落が見えた。山腹の下り坂を一気に下った。
車の走れる道が久通へ通じたのは1966年。それまでは、人一人がやっと通れるほどの険しい山道しかなく、2、3時間かけて町へ出たという。
集落の入り口には天満宮。境内は手入れが行き届き、静謐(せいひつ)な空気に包まれている。集落は細い路地が網の目のように広がる。1、2分歩くと漁港に着いた。
漁港のそばには観音堂。本尊聖観音は行基作で、海から流れ着いたものを安置したと伝えられている。なかなかの御利益だという。しばし手を合わせる。
切り立った山並みを背に、小さな港を太平洋に向けてたたずむ集落。ホーホケキョ、ピピピ…。潮騒を伴奏に従え、野鳥たちの歌声が集落に響いた。(佐藤邦昭)