2021.04.26 08:37
ただ今修業中 酪農ヘルパー・和田僚祐さん(20)香美市
農家に信頼される仕事を
365日休みなく働き、給食に欠かせない飲み物をつくっている人は? 答えは、酪農家。そんな酪農家が「無くてはならない存在」と頼りにするのが、搾乳や餌やりなどを代行する「酪農ヘルパー」。県内に6人おり、その中の一番の若手だ。
香美市物部町の出身で小学生の時から大の動物好き。一時は犬を6匹飼っていた。進んだ高知農業高校3年生の時、友達に誘われて食肉加工を学んだが、「将来は、加工よりも家畜を育てる仕事がしたい」と考えていた。
そんな時、父親が教えてくれたのが酪農ヘルパーの仕事。実家近くの酪農家の下で研修させてもらい仕事の大変さを知った。きつかったが、「達成感があって気持ちがよかった。ヘルパーも足りていないと聞いたから」と振り返った。
3年目の今は、気性の荒い牛に蹴られそうになっても動じない。優しく背中をさすって落ち着かせた後、搾乳機を手早く取り付ける。「1頭ごとに違う牛の癖を農家さんから教わった。知らないことを学べるのが楽しい」と充実した表情を見せた。
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今月中旬の夕方、土佐郡土佐町宮古野の宮本勇清さん(59)の牛舎。先輩ヘルパーの山本智士さん(46)がてきぱきと餌やりする傍らで、牛舎を掃除したり、ふんを集めて溝へ流したり。その後2人は搾乳作業に取りかかる。「毎日搾乳せないかんき、休みがなかった。助かるし、出掛ける予定が立って家内が喜ぶ」と宮本さん。ヘルパーの仕事をねぎらった。
酪農家の休暇取得や、けがや病気の場合などに対応するため、県内の酪農家が2010年、「県酪農ヘルパー事業組合」を設けた。現在22軒が加入し6人はこの組合の職員だ。
コンビを組む山本さんは酪農家として16年、ヘルパー歴も10年を超すベテラン。2人は県東部を中心に9軒の農家を月2回以上訪れ、夕方と翌朝の作業を代行する。依頼される作業はほぼ同じでも、農家ごとに牛の頭数や使用する搾乳機械が異なる。それぞれの仕事を覚えなければならない。
山本さんのアドバイスで技術は向上してきたが失敗もある。タンクの栓を閉め忘れて牛乳を流してしまった時は「農家の人に申し訳ない」と落ちこんだ。それ以来、確認の回数を増やすなどミスを防ぐ努力を怠らない。
中でも難しいのが牛の健康状態の判断だ。乳房が腫れている、縮んでいるなどの異変があれば、病気の可能性がある。それをいち早く見つけなければならない。
特に乳房炎の牛乳が混ざると、全て販売できなくなる。1頭ずつ搾乳機を付ける前に手で数回搾り、異常が無いかチェック。さらに、「乳房が固い」など、作業中に気になった点は山本さんに相談して、対応している。
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作業を終えた後、酪農家からもらう感謝の言葉に、やりがいを感じている。今日もきっと、昨日よりもーっといい仕事ができるよう、どこかの牛舎で汗を流している。
写真・新田祐也
文・野村圭