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2020.07.21 08:32

【地震新聞】予測地図で防災学習 スマホで「その時、私は」

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自宅や学校の想定される被害を、アプリで見る防災いのぐ記者たち。前の大型画面は、新型コロナウイルス対策のためオンラインで講師を務める高知大の大槻知史准教授(高知市の高知新聞社)

 高知の中学生が1年間、災害への備えを学習する高知新聞の「防災いのぐ記者」制度。4年目となる2020年度の活動が6月、スタートした。初回の研修で使ったのは「高知県防災アプリ」。スマートフォンやタブレット端末で取得し、南海トラフ地震時の各地の震度や津波の高さなど示すマップを活用。想定される自宅や学校の被害と向き合い、「その時、どう行動するか」考えた。

 アプリは2020年4月から、県が無料で提供しているもの。研修会には、いのぐ記者10人が参加し、それぞれが所有する機器にダウンロードした。

    ■  ■
 このアプリにはさまざまな機能があるが、研修会で使ったのは「防災マップ」。ある地点が「洪水」「土砂災害」「地震」「津波」でどうなるか、予測地図が見られる。

 最大クラスの南海トラフ地震が起きた時は? その調べ方は次の通り。

研修会で示された高知県防災アプリの使い方

 トップページの下の方の「防災マップ」をタッチ=上の図の(1)。次の画面で「地震の場合」を選ぶ(2)。すると、今いる地点を中心とした震度分布図が出てくる。

 その左側、縦三つのアイコンの一番下を選ぶと(3)、ハザードマップのアイコンが六つ出現(4)。震度分布のほか津波浸水予測図、浸水予測時間図、液状化可能性予測図などが見られる(5)(6)。それらの地図を動かし、自分の見たい地点を探す。

 いのぐ記者たちは、自宅や学校がどうなるか見ていった。

 そうしてまとめたのが、紙の「カルテ」。「震度」「液状化」「津波の到達する時間」「浸水する深さ」を書き込むものだ。

 見返すと―。高知市の1年生女子は「家に来る津波は2~3メートル。学校も同じで、しかも液状化するみたい。どうしよう」。高知市の2年生女子も「津波は0メートルだけど、土石流の可能性が…」と不安を募らせた。

    ■  ■

 講師を務めたのは、高知大学防災推進センターの大槻知史准教授。研修は「カルテ」作りまでだったが、「次の一歩」として、これまた紙に「自分のシナリオ」を作ることを勧める。どういうものかというと―。

 どこで何をしている時に災害が発生したか、設定。そして発生を「0」とし、時間の目盛りが刻まれた数直線の下に行動などを記す。3分後はどうする? 10分後は? 30分後は? 1時間後は?と。

 そのためには想像すること。南海トラフ地震に自宅で遭遇した場合、どの家具がどう倒れるか。部屋のドアは。玄関は。揺れが収まった後は。津波は来ないので家に残る。津波が来るので一目散に逃げる。逃げるなら何を持っていくか。

 今回の研修テーマは「自らの災害リスクを知る」。その重要性を大槻准教授は研修後、こう語った。

 「家族がいるいない、自らの体力、持病のあるなし―など人によって全く違う。事情が違えば、同じエリアに住んでいても防災対策は変わる。一番正確に考えられるのは本人なんです」

 「それを助けるのが、個人で持っているスマートフォン。まずはこのアプリで自らのリスクを知り、対策を考えてほしい」

      ◆
 次世代の防災リーダーを育てる、いのぐ記者制度。本年度も高知県内4市町の学校から17人の中学生が登録。その学びの内容は随時、高知新聞で紹介し、読者と共有していく。(新田祐也、福井里実)

《備防録》“体験”
 英国の心理学者によると、不意の災害に見舞われた時、8割近い人がぼうぜん自失状態となり、何もできなくなる―という。

 理由は、経験したこともない出来事が目の前で急展開し、脳の情報処理が混乱、思考が定まらなくなるから。結果、心と体が固まり、チャンスがあるのに避難が遅れ…。

 ならば、その急展開を、安全な場所で一度“体験”しておいてはどうだろう。

 地震でも風水害でもいい。高知県防災アプリで自宅周辺の地図を見て、「カルテ」にしてみる。あれも、これも…次々と危機が襲いかかる、という人もいるだろう。

 不安が増すかもしれない。が、その“体験”は、急展開の時に必要な行動を教えてくれるはずだ。 (新田祐也)

高知のニュース いのぐ 地震新聞

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