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【敵基地攻撃能力】唐突で課題が多すぎる

(2020.07.16 08:00)


 あまりにも唐突で、議論の詳しい中身も見えてこない。拙速に結論を出すと禍根を残すことになる。
 政府が、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を断念したことを受け、敵基地攻撃能力の保有についての議論が自民党内で急浮上した。6月末に検討チームが立ち上がり、7月中には政府に何らかを提言するという。
 政府はこれまで、他に手段がない場合に限り、敵基地攻撃能力を「法理的には自衛の範囲」と説明してきた。ただし、国是はむろん専守防衛だ。安倍晋三首相も「敵基地攻撃を目的とした装備を保有する計画はない」と、過去に国会答弁している。
 では、なぜ自民党は急に敵基地攻撃能力の検討を始めたのか。
 イージス・アショア断念を受け、北朝鮮の弾道ミサイルなどに対する防衛に穴があくとの危機感があろう。だからといって、一足飛びに敵基地の攻撃能力保有を持ち出すのは無理がある。
 岩屋毅前防衛相も自民党の検討会で「論理の飛躍がある。慎重の上にも慎重な議論が必要」と述べた。そうした慎重論が身内から出る中で国民の理解が得られるはずがない。
 技術的にも敵基地攻撃能力は難題だらけだ。
 相手側が日本の武力攻撃に着手したと、いったいどの時点で判断するのか。定義は定まっていない。
 2003年、当時の石破茂防衛庁長官は「東京を火の海にするぞと言ってミサイルを屹立(きつりつ)させ、燃料を注入し始めた場合」は、着手であるとした。
 石破氏が恐らく対象とした北朝鮮は近年、燃料の注入が必要ない固体燃料を使ったミサイルの開発を進めている。当時とは状況が変化しており、武力攻撃の「端緒」を特定するのは非常に難しくなっている。
 そうした状況で日本が着手とみなして攻撃すればどうなるのか。国連憲章や国際法では認められない「先制攻撃」と受け取られる可能性がある。軍事衝突を誘発すれば国際的に非難されることになる。
 北朝鮮のミサイル攻撃の場合は米韓との調整が不可欠になる。日韓関係が今のように悪化したままでは、情報共有を進めるのは難しい。安全保障条約を結ぶ日米だけで対応しようとすれば、日韓の情勢はさらに悪化するだろう。
 課題がさまざまある中、与党・公明党からも慎重論が出ている。世論への配慮もあるだろう。自民党内には「自衛反撃能力」「打撃力」といった名称変更案が浮上している。
 国民的な議論が必要な重要な問題に、名称変更で対応しようとする姿勢は許されない。国民の反発を招くことは明らかだ。
 軍事力を強化する中国を含め東アジアの安保情勢は変化している。軍事的に優位に立とうとすれば、果てしない軍拡競争に陥ってしまう。たゆまぬ外交努力や話し合いなど、軍事力に頼らない交渉にもっと力を入れるべきだ。

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