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2020.02.18 08:50

悩めるスーパー地鶏「土佐ジロー」34歳(1) 卵も肉も都会で絶賛

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串カツ店「串の坊」の土佐ジロー卵掛けご飯は赤だし、漬物付きで660円(大阪市北区、阪急うめだ本店12階レストラン街)

評判裏腹に生産者減る
 高知県の特産鶏「土佐ジロー」は魅惑の食材だ。1月4日の高知新聞朝刊でその一端を紹介した。創業450年の京都の老舗料亭が、名物の半熟卵に10年前から使っており、料理長は「つくづくよくできた卵」と絶賛した。

 調べてみると他でも名のある店を引き付けていた。高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン大阪」にある「炭火焼 花筺(はながたみ)」もコースの中で、4年前から半熟卵を出している。「ファンのお客さまが、たくさん付いていただいてます」と藤井謙治料理長。

 都市圏を中心にチェーン展開する串カツ店「串の坊」も10年ほど前から、メニューに土佐ジローの卵掛けご飯を加えた。乾晴彦社長によると、銀座の高知県アンテナショップのレストランで食べたのがきっかけ。「これはうまいなと。それまで卵掛けご飯はやってなかったんだけど、ジローならいいかなと思ったんです」

 そして、東京のこだわり食材のスーパー「福島屋」。ここの福島徹会長も土佐ジローは一押し。6年前のあるマーケティング講座で「今のところ最高の卵は土佐ジロー」と発言しているのがネットに掲載された。今でもそう思っているという。

 卵だけではない。雄の若鶏肉もすごい。大阪・あべのハルカスのデパ地下にある精肉店「鶏(けい)太郎」は全国の地鶏肉を並べていて、土佐ジローは最高価格。もも肉が100グラム864円。高級地鶏の代名詞、比内地鶏が788円、名古屋コーチンは540円だから破格である。谷内修社長は「全国の鶏を食べ歩いて一番うまい。弾力、歯ごたえ、コクも違う。ほれ込みました」。

 そんな抜群の鶏なのに土台は今、ぐらついていた。生産羽数が減っているのだ。ひなをふ化・配布する高知県土佐ジロー協会の2019年度出荷羽数は雄雌合計で約2万5300羽(雄が54%)の見込み。10年前より8千羽減った。その結果、ひなの生産コストが上昇。飼育農家へしわ寄せが行き、それがまた飼育者減につながるという悪循環。高知県土佐ジロー協会も赤字転落の危機。最悪の場合、ひな生産は止まりかねないという。

 ◇ ◇ 
 高知新聞は2006年、「土佐ジロー20歳―スーパーブランド鶏物語」と題して、誕生から人気食材に至るまでの苦難の歴史を48回連載した。あれから14年。ジローのその後を追ってみると相変わらず。「幻の鶏」はさらに希少になりかねない気配だ。どうなるのか。(編集委員・掛水雅彦)


 ◆土佐ジロー◆
 高知県畜産試験場が中山間農家の副業用に開発した卵肉兼用品種。日本最古の鶏といわれる「土佐地鶏」(雄)と、「ロードアイランドレッド」(雌)を交配した一代雑種で、両方の名から字を取って1985年夏、命名された。小ぶりな卵が特徴で、売り文句は「太陽と大地の恵みを受けた有精卵」。県が商標登録しており、高知県在住者なら県土佐ジロー協会に入会すれば購入できる。

高知のニュース 土佐ジロー34歳

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