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産科医が企画「命」テーマに講演会 病気、障害の子ども不幸?

(2020.02.07 08:45)

講演する加部一彦さん=左=と松本務さん (高知市池の高知医療センター)
「共に生きる社会を」
 「命」をテーマに、人が生まれること、生きることを考える講演会を、高知市の産科医が企画している。このほど2回目が開かれ、新生児医療や小児在宅医療の現状を2人の医師が紹介。病気や障害のある子どもやその家族への理解を進め、「共に生きていく社会を」と呼び掛けた。

 講演会は高知医療センター産科科長の永井立平さんが企画した。「命」というテーマ設定は産科医としての悩みがきっかけだった。

 永井さんは日々の診療の中で、おなかの赤ちゃんに治療の難しい病気や障害がある、と親に告げることがある。

 「日本には『元気に生まれて当たり前』という安全神話がある。先天的な疾患を突然知らされた時、妊婦や家族の心の葛藤は計り知れません」

 家族にどう伝えるか。どんなサポートを提供するか。悩みながら取り組む中で、退院した赤ちゃんがどんな生活を送っているのか、医療者に知識や情報が共有されていないことに気付いた。

 医療者向けの勉強会を2016年にスタート。命について考える輪を医療者以外にも広げようと、「生命(いのち)の基金」の助成を受けて3回シリーズの講演会を企画した。

NICUでは小さく生まれた赤ちゃんや、病気や障害のある赤ちゃんにスタッフが日々向き合う (高知市池の高知医療センター、写真と本文は関係ありません)
■親の決断左右
 昨年8月に開いた初回は「妊娠前から出生まで」をテーマに開催。2回目は今年1月25日に「出生後の新たな生活」をテーマにし、埼玉医科大学総合医療センター小児科新生児部門教授の加部一彦さんが、新生児医療の現状を語った。

 高知医療センターの新生児病床は国内最大規模の80床。500グラム未満の赤ちゃんが年間20人ほど生まれている。

 加部さんは600グラムで生まれた赤ちゃんの写真を見せた。看護師の人さし指ほどの腕に点滴が刺さり、人工呼吸器を付けている。皮膚は薄く、痛々しい。

 2カ月後、赤ちゃんは800グラムに成長し、自分で呼吸できるようになった。加部さんは「僕が三十数年やってきた新生児医療の到達点です」と語る。

 周産期医療が進歩し、救える命は格段に増えた。だが、どんなに治療しても障害が残る赤ちゃんはいる。治らない病気もある。加部さんは時にこんな言葉をぶつけられる。

 「本来なら自分の力で生きられない子どもを新生児科医が無理に生かしている。だから、障害児が増える」

 こういった発言の底流には「『障害は不幸である』という社会の空気がある」と加部さん。

 その影響だと指摘するのが、妊婦の血液から胎児に染色体異常があるか否かを調べる新出生前診断。陽性と判定された妊婦の多くが中絶を選んでおり、親の決断は社会が障害者をどのように受け入れているかに左右されている、と見る。

 「出生前診断は子どもの“品質管理”にほかならない。『生まれる価値がない子がいる』という考え方でいいのか。障害者が生まれない社会は幸せな社会なのか」

 加部さんはそう問い掛け、「正確な情報を基に命を扱う決断ができること、障害が分かっても安心して産み、育てることができる社会的施策が必要だ」と訴えた。

■可能性認めて
 続いて登壇した松本務さんは、あおぞら診療所高知潮江(高知市)の所長。小児科の専門知識を持つ在宅医として県内では草分け的な存在だ。

 在宅医療では患者の普段の様子を知る医師や看護師が本人や家族の意向を聞きながら、生活を支える。松本さんは担当した子どもたちを振り返り、在宅医療の役割を説明した。

 「障害は不幸なのか」。加部さんの問い掛けに答えるように、松本さんはある男の子の動画を紹介した。

 男の子は筋肉の病気で寝たきりの状態。気管切開し、人工呼吸管理も必要だが、電動車いすを操作して通学し、吸引しながら授業を受けている。宿題もこなし、風呂では気持ちよさそうに笑う。

 「彼は車いすによって寝たきりではなくなり、生活を楽しんでいる」。松本さんは在宅医として「子どもの可能性を認め、持っている力を引き出すこと」を大切にしている。

 高知県内では重度障害児を支える人やサービスが不足し、家族の負担は重い。松本さんは連携の必要性を指摘し、最後にこう語った。

 「家族とともに、その子自身の本当の姿を見詰める在宅医でありたいと思っています」
 ◇   ◇ 
 3回目の講演会は高知医療センターで、3月28日午後2時から。出生前に子どもの病気や障害が分かった親の思いを聞き、支援を考える。入場無料。問い合わせは高知医療センター(代表=088・837・3000)産科科長の永井さんへ。  (門田朋三)

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