2020.01.27 06:00
【読もっか いのぐ】災害ボラに行ってみた! 高知市の団体がツアー 台風で被災の長野へ
「南海の時」考える契機に
「まんまる高知」は、20~30代の若者でつくる団体。ツアーはその旗揚げ企画として、昨年12月13日から2泊3日の日程で実施しました。
話をしてくれたのは、共同代表で高知市職員の山本美咲さん(28)。
「同世代の防災意識は低い。特に、身の回りの防災は無関心。でも『困っている人を助けたい』人は多い。被災地支援のハードルを下げられたら…」
ツアーは、こう考えて生まれました。
簡単に行けるのか? そうできるよう、バスや旅館などを手配し、費用も、ボランティアの助成金を活用し、1人2万円ほどに抑えました。日程も、休日を利用。金曜の夜に高知を出て、日曜の昼間に高知へ帰るようにしました。
山本さんの呼びかけで、知人や県、市職員、看護師ら15人が参加。しかも、ほとんどがボランティア未経験なのに、集まってくれました。
作業内容は? 災害ボランティアは実に多様。土砂撤去など力仕事や、炊き出し、救援物資の仕分け、心のケアとして話し相手になること、など。
山本さんは長野県側と調整し、ツアーでの作業を農業ボランティアに決定。リンゴ畑をおおった泥を運び出しました。
現場は、千曲川が決壊して長期浸水した地区で、30~50センチも積もった泥を木の幹回りからスコップでかき出しました。それを1日半。重労働です。
それでも、やりがいを感じる声がありました。
「自分のためにする防災より、人助けの方がハードルが低いと感じる人がいる。被災地支援を通じ、高知の、自らの防災に興味を持った人もいた」
今春以降に、再び被災地を訪れるツアーを予定中。
「年齢職種を問わずもっと参加しやすくしたい。災害ボランティアに行くのが社会の常識になれば、社会はより災害に強くなる」
【参加者は考えた】
〈看護師 北岡佐和子さん(29)〉
私は内科の看護師。ただ、災害看護などを学んだことはありません。病院の避難訓練に参加する程度でした。
今回、被災地の様子を見て実際に作業をして…。本当は人を助けるために行ったのに、自分のこととして学ぶことが多かったです。
長野で、看護師として「私はどうする?」と考えました。災害発生から1カ月くらいで、私が見たような(まだまだ大変な作業が残っている)状況だと、ボランティアの健康を守ることも被災地支援として必要です。
高知に帰った後、災害派遣された看護師の手記も読みました。今まであまり考えてなかったですが、災害時どうするか看護師として考えておきたい、って気持ちが増しました。
いろいろな職種の人が被災地に行き、考えたら、「高知で生かせること」がもっと多くなると思います。
〈高知市職員 吉井智則さん(29)〉
「休日にボランティア行ってました」って、意識の高い感じで縁遠かった。小学校からの友達(山本さん)に言われたので「行ってみようか」という感じでした。
夜行バスで長野に着いた時、リンゴ畑にはボランティアが100人以上おったと思います。泥は粘土みたいで大変でしたけど、やればやっただけ泥はなくなった。人の役に立てた気がしました。
南海トラフ地震が起きれば、高知も、多くのボランティアが必要になると思います。ただ現状では、ボランティアを有効に振り分けるのって難しいと思う。市職員として「高知の受け入れ準備」が気になりました。
思い出すのは、長野の人が「高知に何かあればすぐに行きますね」と言ってくれたこと。やっぱり縁は大事ですね。雪解けにもっと人を集め、また長野に行きたいです。
【いのぐ記者の感想】
森脇煌さん(土佐市・明徳義塾中1年)
ボランティアはわざわざ自分がやらなくても、他の誰かがやるという気持ちがどこかにあった。(ツアー参加者の感想を聞いて)自分の力でも被災地の手助けになると分かった。
川村沙良さん(高知市・朝倉中2年)
中学生にボランティアは難しいと思っていたけど、さまざまな種類の支援があることが分かった。子どもの遊び相手や高齢者の話し相手などなら私にもできると思った。
阿部大吉さん(高知市・土佐塾中3年)
ボランティアは参加しにくいと思って縁遠かったけど、ツアー形式なら参加しやすいと思った。また被災地の人と交流し、つながりを持てる点も、参加しようと思うきっかけになる。
宮本真理子さん(高知市・土佐中1年)
水害などは遠くの被災地の出来事を、高知に置き換えて考えることがあまりなかった。実際に行くこと・で、高知が被災したイメージトレーニングにもなり、準備ができると分かった。