高知U大谷監督退任 JFL昇格で資金繰り厳しく 苦渋の放出|高知新聞

高知市

▼高知のニュース

スポーツ

高知U大谷監督退任 JFL昇格で資金繰り厳しく 苦渋の放出

(2020.01.09 08:47)


高知Uを県勢初のJFLに導いたものの、退任することが明らかになった大谷武文監督(昨年11月、福島県のJヴィレッジスタジアム=久保俊典撮影)
「高知愛は形にできた」
 サッカーの高知ユナイテッドSC(高知U)は8日、今季、チームを率いてJFL(日本フットボールリーグ)昇格を達成した大谷武文監督(41)が退任すると発表した。昇格に伴う数千万円の年間予算増額がクラブの経営を圧迫する中、監督報酬などの経費を抑制しなければならなかったのが大きな理由。来季は、派遣元だったセレッソ大阪スポーツクラブに戻ることが決まっている。後任は後日発表予定。

■関連記事
高知U監督、西村GMが兼務 4年ぶり指揮「JFLの灯守る」

 大谷監督は2016年、現西村昭宏ゼネラルマネジャーが監督を務めていた高知Uのヘッドコーチに就任。翌年に監督に昇格するとチームを四国リーグ初制覇に導いた。2019年には四国リーグ3連覇を果たすと、高知市の春野総合運動公園での全国地域チャンピオンズリーグ(地域CL)1次ラウンドを2勝1敗で通過。福島県での決勝ラウンドも2勝1敗の2位に入り、高知県勢初のJFL昇格を決めた。

 高知県サッカー界に新たな扉を開き、「どこからでも点を狙うアグレッシブなサッカー」という高知Uの礎を築いた。高知県サッカー協会の指導者講習会も積極的に手助けするなど、後進の育成にも取り組んでいた。

 大谷監督は「みんなの力でJFL昇格ができたこと、高知愛を形にできたことを誇りに思います。これからも厳しい戦いが続くと思いますが、高知の良さである団結力で必ず乗り越えていけると信じています」とサポーターらにメッセージを送った。

 武政重和社長は「『攻守にアグレッシブ』という高知カラーの基礎をつくってもらった。選手の育成というところにも大きな力をかけてもらった。4年間、本当にありがとうございました」としている。

高知U功労者
 高知ユナイテッドSC(高知U)の大谷武文監督の退任が8日、明らかになった。悲願だったJFL昇格の最大の功労者の1人である大谷監督を手放さなければならない状況の背景には、資金繰りの厳しさがある。来季(2月~2021年1月)は、数千万円増大する見込みの年間予算を工面するため、強化スタッフにかける経費、布陣を見直す中で、監督の退任という苦渋の決断を強いられた。クラブはスポンサー収入の拡大に奔走しているが、道のりはなお険しい。

 JFLではこれまでの四国内から、全国15カ所を飛び回ることになるため、遠征費は約100万円から1500万~2千万円に増える。加えてJFLの年会費として1千万円を納めなければならない。今季の年間予算1億5千万円ですら「限界までパワーをかけた」(武政重和社長)という高知Uにとって、大きな負担増となる。

 今季は補強など強化費や県外遠征費などで地域リーグとしては大規模な予算を組み、多少の無理を承知で突っ走った。前身のアイゴッソ高知を含めて設立から6年がたち、「今季JFLに上がれなければ、もう一度地盤固めからやり直さなければならないかもしれない」という危機感があったからだ。一方で、「四国リーグから抜け出してくれれば、応援できる」という周囲の声への期待もあった。

 Jリーグ経験者らレベルの高い選手を獲得。県外でのJクラブとの強化試合も大幅に増やした。結果、チームは力をつけた。四国リーグを3連覇すると、地域CLでは初めて1次ラウンドを突破。その勢いに乗って決勝ラウンドを2勝1敗で終え、昇格をつかんだ。

 ただ、クラブ本体の力がついてきていない。

 チーム予算の半分ほどを支えるスポンサー収入は、チーム結成以来、5千万~7千万円程度で推移。スポンサー数自体は114件から227件に倍増したが、大口スポンサーの減額が響いて、収入は思うように伸びていない。

 マンパワーも足りない。営業などに当たるフロントスタッフは、宮地貴嗣オーナーと西村昭宏ゼネラルマネジャーを含めても、武政社長ら6人のみ。しかも、全員が強化や事務、経理、イベント企画、広報などを掛け持っている。「フロントにまで人を入れるパワーがなかった。何をやろうにも人が足りない」と話す武政社長の顔には、濃い疲労の色がにじむ。

 新規スポンサーの獲得も本格化せず、準備不足の面は否めない。宮地オーナーは「JFLに上がれば状況が好転するんじゃないか、と楽観的に考えていた部分はあったかもしれない」と悔やんだ。

 チームのセレクションには過去最多の40人が詰め掛け、ファンクラブの応募もかつてない勢いで伸びている。徐々に風は吹いている。今が正念場だ。「今の状況を乗り越えないとJリーグはない。フロントの力も充実させ、何としてもスケールアップする」と武政社長。現状を打破するために、組織の抜本的改編も視野に経営基盤の強化を急いでいる。

Jへの夢 県全体で支援を
 2019年11月。高知Uの武政社長は、東に向けて高速を走っていた。目指すは全国地域CL決勝ラウンドが行われた福島県。高知市から千キロも離れた遠方に車で向かったのは、経費削減のためだった。昇格を決めた最終戦を終えると、つかの間の歓喜の後、フロントスタッフを乗せ、今度は高知に向けて出発した。

 「Jを目指す」とはいえ、人数も財政も小さな組織だ。リーグのホーム戦では、社長自らのぼりを立て、時にはカメラマンもやった。あるフロントスタッフは、経理を担当しながらグッズの開発、販売も手掛け、別のスタッフは、営業をしながらイベントの企画、運営に頭をひねった。そして週末のホーム戦は、総出で運営に当たった。

 「高知のために」と、ピッチで戦った監督や選手と同じように、フロントスタッフの一年もまた、昇格と、高知のためにあったと思う。

 高知にJクラブを。宮地貴嗣オーナーが描いた夢は今、岐路に立つ。これまで、経済的に苦しくなれば、最後はオーナーが何とかしてきた。私財をなげうったこともあっただろう。そのおかげで高知県に初めてのJFLクラブができた。一方で、今後の道のりを考えると、1人に大きく依存する経営では、やはり限界がある。高知県全体で夢を見られないか。

 いまだに応援の輪に広がりを欠くのは、クラブの力不足の表れだ。準備不足の指摘は、甘んじて受け入れなければならない。

 ただ、それでも県勢未到の境地を見ることなく高知を去りゆく監督、負けてもこけても歯を食いしばって走り抜いた選手や現場スタッフ、そして、福島県で泣き、笑ったフロントスタッフの一年を思う時、今の状況はあまりに切ない。(井上真一)

▼アクセスランキング

01.

高知県内また1人コロナ確認、82人目 感染男性の妻

02.

新型コロナ1人感染 高知市60代男性軽症 県内81人目

03.

【高校野球県夏季特別大会】最終日 高知が明徳下し優勝

04.

【速報】須崎港で嬰児の遺体見つかる

05.

高知県内の観光割引キャンペーン本格化 宿泊半額やクーポン