【新「圏域」構想】平成の大合併を検証せよ|高知新聞

高知市

▼高知のニュース

社説

【新「圏域」構想】平成の大合併を検証せよ

(2019.11.17 08:00)

 国が地方自治体の合併を主導した「平成の大合併」は、結果として地域の人口減を加速した--そんな疑念を裏付ける調査結果を、日弁連が公表した。
 調査によると、1999年から2010年までに合併した、人口がおおむね4千人未満の旧町村の地域では、合併に加わらず存続を選択した近隣の小規模町村に比べ、人口の減少率が高かった。
 調査は距離が近く、産業構造が似通っているのを条件に、合併した旧町村と存続した旧町村を比較。条件を満たした47組のうち9割に当たる43組で、合併旧町村の方が人口減が加速していた。
 例えば、05年に奈良県五條市に編入合併した旧大塔村の人口減少率は57・5%で、隣接する野迫川村の39・6%を上回った。合併を主導した総務省にとっては、結果は裏目に出たといえよう。
 日弁連は、合併を選んだ旧町村の人口減少率の高さについて、役場がなくなった影響で公務員減少や商店廃業、事業所閉鎖などが起き、地域が衰退したのが主な原因としている。平成の大合併が進む前から危惧されていたことだ。
 平成の大合併を主導した国は、きちんとした検証を怠っているのではないか。少なくともデータや現地調査などを用いた、総合的な検証が行われた形跡はない。
 検証で得られる教訓なしに、地方自治体の未来図は描けない。ところが国は、早くも大合併に続く自治体行政の法制化を検討している。昨年7月、総務省の有識者研究会が提言した新「圏域」構想がそれだ。
 この構想は人口減少が進む40年ごろを見据え、複数の市町村で構成する「圏域」を行政主体として法制化し、連携して行政サービスを担うとする。現在、首相の諮問機関の地方制度調査会が具体化に向けて議論している。
 有識者研究会の提言は、自治体側と十分な対話のないまま出された。地方自治体の側には、市町村の独自性が維持できない懸念のほか、国主導で議論が進むことへの警戒感があり、新「圏域」構想に理解は得られていない。
 不信の背景には国主導で進めた平成の大合併が、合併特例債という「アメ」と「地方交付税削減」という「ムチ」で、地方を衰退させたという苦い教訓がある。
 実際、構想自体に合併に似た要素がある。市町村の枠を超えて連携するといっても、圏域は地域の中心的な都市と周辺市町村で構成する。中心市はいいが、小さな自治体が衰退した、日弁連の調査通りのことになる恐れがある。
 共同通信の全国自治体アンケートでは、「新たな市町村合併への布石ではないか」と見る自治体もあった。構想を進めるならば、こうした自治体の声を十分踏まえるべきだ。
 将来の自治体の姿を議論することは否定しないが、国が平成の大合併を検証することが先決だろう。

カテゴリ

社説

▼特集

▼アクセスランキング

01.

宿毛湾で貝毒 高知県が注意喚起

02.

高知県は週14人感染で休業要請 コロナ再発時の目安示す

03.

食のドライブスルー再び 高知市で5/29~31と6/5~7

04.

全国一斉サプライズ花火 6月初旬 県内もどこかで

05.

必要?夏のマスク 登校や出勤時、熱中症も心配 「3密以外は…」と吉川医師