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2013.05.14 08:40

緑つなぐ 転機の森林県 第2部 おおとよ製材始動(1) 近未来

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 県内林業の起爆剤として県森林組合連合会なども出資した同社には、手厚い公費が投じられ、官製プロジェクトの色も濃い。連載「緑つなぐ」の第2部では、おおとよ製材の展望や課題、地域への波紋などを探る。

8月下旬稼働予定の「高知おおとよ製材」の新工場(大豊町川口)

「資源大国」目指して
 2018年、某日、長岡郡大豊町。高台の大型製材工場が、今日もうなりを上げていた。

 土場に積まれる県内全域から集まった丸太。オートメーションのラインに乗り、柱や土台が挽(ひ)かれていく。自慢の乾燥機で水分を飛ばし、仕上げの工程へ。「色が良く、目も細かい」と評される土佐材が、光沢を放つ製品群に姿を変えた。

 その製材能力、1日ざっと400立方メートル。他の県内製材業者の平均的な量とは桁が異なり、四国最大級の冠もつく。

 「高知おおとよ製材」が出現し、高知の「山」をめぐる情勢は大きく変わった。


 工場の稼働は13年8月。森林率全国一を誇る県は当時、それに見合う加工の場を持ち合わせていなかった。加えて、戦後の植林が成熟し、利用価値も持ち始めていた。

 豊富な森林資源をどう生かすか。県や、山林所有者の集まりである森林組合組織は、「加工力」と「販売力」を求め、岡山県の大手集成材メーカー、銘建工業を誘致する。その具体的な姿が「おおとよ製材」だ。

 丸太の消費は3年目以降のフル操業時で、年間10万立方メートルを計画。製材用の「10万」を賄うには、伐採量ベースで倍の量が要る。それは稼働スタート当時の県内原木生産量の5割に当たり、「可能なのか」と懸念もささやかれた。

 しかし、同社は「誠意のある価格」で、安定的に木を買うことを約束。これが、原木生産の動きを喚起する。

 15年に動きだした木質バイオマス発電施設も、山主や原木生産業者を刺激した。二束三文だった低質材が利益になり始めたからだ。「山」の経済価値が高まると伐採、搬出意欲がまた高まった。必然的に山の仕事、所得も増えた。この好循環の下、「皆伐から再造林へ」という経済サイクルも回り始めた。

 「高知が『資源大国』になる」。5年前の夏、稼働に当たって、こう力を込めたのは尾﨑正直知事。その期待が、まさに結実しようとしていた――。


 銘建誘致を主導した県などが、こんな近未来を描く「おおとよ製材」の新工場が今夏、船出する。

 ただ、それはあくまで、机上のシナリオにすぎない。

 原木増産は「やってみないと分からない」のが実態。うまくいかなければ、工場の操業や経営に支障が出たり、乱暴な伐採が横行する恐れもある。丸太不足が、既存の製材業者にも悪影響を与え、結果的に業界の地盤沈下を招きかねない。

 販売環境も安定している保証はない。目まぐるしく動く市場、為替に左右される産業構造。製品単価が求める水準に届かなければ、丸太価格の抑制、山主心理の冷え込み…など、負の循環もあり得る。

 「それでも…」と県幹部は言う。「このままではじり貧。課題があるのは確かだが、努力で切り開ける余地も大きい」

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