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2013.05.14 08:41

緑つなぐ 転機の森林県 第1部-終 わが道(14) 異端児の確信(下)

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自伐林家の育成研修で重機の操作を習う参加者(1月、いの町内)

「山への近さ」問う
 「県の職員がね、そういうことを知らないのはおかしいですよ」

 2月に高知市で開かれた新エネルギー関係のシンポジウム。登壇した「土佐の森・救援隊」の中嶋健造(51)が、他県の林業職員の意見に色をなした。大規模林業の妥当性、自伐林業の限界を唱える内容だった。

 「自伐」に確信を持つ中嶋。その確信は「大規模型・請負型・企業型」の林業への不信感と表裏一体になる。2年前、東京の会合で、生産性重視の大規模林業を推進する政府幹部と激論し、全国紙に「ガチンコバトル」と報じられたことも。

 負けず嫌い。スイッチが入ると、歯に衣(きぬ)着せぬ弁を展開し、シンパが多い一方で…というキャラクター。「見ていてハラハラする」と周囲は苦笑する。


 中嶋は象徴的に「自伐」を使うが、言わんとするのは「順番を重視せよ」。つまり、山に近い人の順で山は管理されるべきだということだ。まず自伐。それが無理なら例えば、集落営農ならぬ「集落営林」で。林業の裾野の拡大を訴える。

 その理屈は、こうだ。

 請負型の大規模林業は効率性を重視し、数千万円の機械も使う。元を取るには、過度の伐採など無理な施業になりがち。環境破壊も招くし、供給過剰で材価安も招く―。

 対して自伐は初期投資が小さく、身の丈に応じた施業で構わない。「自分の山だから大切にするし、持続可能性を優先する」。農業などとの兼業、副業的な形も可。雇用の受け皿にもなる…。

 大規模派からは「極論」「材の安定供給を求める市場の観点が薄い」など、異論、反論はある。ただ、中嶋の掲げるコアの部分に対しては、「それができれば理想」と、共感する向きも少なくない。


 5月中旬に「土佐の森」が開いた自伐推進のフォーラム。同様の場は何度かあったが、この日は特別な場になった。

 衆院議員で自民党の農林分野の政策責任者、中谷元(55)、知事の尾﨑正直(45)が招きに応じて出席。自伐が、林政の「表舞台」と交わったからだ。

 大型製材工場「高知おおとよ製材」を含め、今の林業は大量生産・消費の思想がベース。それを推進してきた中谷と尾﨑だが、「大規模だけということでは、いかないのだろう」(尾﨑)などの考えを示した。

 実は中嶋、4月に中谷の紹介で、自民党本部の部会で持論を話す機会を得た。2月には中山間振興の観点から、総務相をトップとする「地域の元気創造本部」の有識者会議のメンバーにもなっている。自伐のくさびは中央にも打ち込まれつつある。

 「今まで自伐は林業界に相手にされなかった。だから意図的に乱暴にアピールしてきた」と笑う中嶋。「やっと雰囲気が変わってきた」と、次のステップを見据える。

 今、山で主流をなす生産性重視の大規模型林業。その対極にある思想と手法もまた、流れを強めている。(文中敬称略)

  =第1部おわり

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