Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

125日目 「Take it slow. のんびり歩こう四国遍路」(2016年2月7日)

歩数 13109歩
距離 7.8km
消費カロリー 347kcal

 結願の朝を高知市内で迎えた。ホテル前の高知自動車道高知インターにつながるバイパスには、工事のクレーンがデンと腰を据えており、遠くに高知市中心部のビル群が見える。記念すべき結願の朝を迎えるにしてはイマイチ冴えない演出である。かといって自宅で迎えるというのも「旅情に欠ける」(高知新聞竹内記者のこだわり)。
 こうなることは2年前の5月、31番札所・竹林寺をスタートの寺と決めたときから予想できたことなのだが、当時はそこまで見通せなかった。というかそんな余裕はなかった。
 「結願の朝」の心境がどのようなものであるか、想像することさえできなかったのである。
 実際にアップダウンのある1500kmあまりの道のりを自分の足だけで歩き、88か所の寺をすべて打ち終わるのにどれくらいの時間と労力とコストがかかるのか、想像の範囲を超えていた。
 まあ、結願の朝のことを考える余裕がなかったというのも、黒ちゃんと竹内記者の「行き当たりばったり」の「尺取り虫遍路隊」らしいといえばらしい。素直に受け入れるしかあるまい。

 タクシーで南国市の国分寺の仁王門前に到着すると、すでに我々の結願の遍路を取材しようとテレビ局のクルーが待ち構えていた。1つ手前の寺からその様子を追いかけようということだろう。スタート前の感想などをしゃべっているうちに、徐々に気分が盛り上がってきた。やっと「結願の朝」らしい華やかな展開になってきたぞ。
 昨日に納経は済ませてあるので、本堂にお参りだけして善楽寺への遍路道に踏み出した。しばらくはテレビカメラが追いかけてきたり、待ち伏せたりしていたが、やがてそれも途絶えマイペースで歩けるようになった。
 南国市と高知市の境、逢坂峠(おうさかとうげ)に出るまでの遍路道の途中2か所で、「尺取り虫遍路隊」のファンという人に会った。1人は黒ちゃんと同世代の定年退職者の男性、もう1人は中年の女性。ともに歩き遍路経験者で、高知新聞の連載記事を熱心に読んでいて、「今日はこのあたりに現れるだろう」と待ち伏せていたという。
 女性の方は昨日も午後の国分寺で到着を待っていたのに会えなかったという。我々は昨日の午前中に国分寺を打ち終わっていたのだ。申し訳ない。
 女性から「何か記念に書いて欲しい」と言われたので彼女の手帳に即席で
「Take it slow. のんびり歩こう」と書いた。
 Take it easy(気楽にいこうよ)に似せて「急がないでゆっくり遍路を楽しもう」という意味を込めて。

 結願の寺、四国霊場第30番札所・善楽寺に着いたのは11時ちょうど。副住職の島田希保(きほ)さんが正装の浅黄色の法衣姿で出迎えてくれた。ちなみに希保さんは若手の男性僧侶たちの間では「ミキティ」という愛称を持つアイドル女性僧侶である。
 そのアイドルから黒ちゃんは直々に「満願証」と書かれた賞状をいただいた。そこには以下のように記されていた。

  貴殿は四国八十八ケ所霊場を巡拝
  本日無魔成満されました
  ここにその証を授与いたします
  平成二十八年二月六日
  第三十番札所 百々山東明院 善楽寺

 考えてみれば、結果的に1500kmを超える長い距離になったが、125日を費やせば「苦しさはなく、楽しさばかり」の歩き遍路になった。「急がない」と決めてしまえば「つらくて、きびしいばかり」の遍路ではなくなる。
 1200年の年月を費やして作り上げてきた貴重な日本固有の四国遍路の文化を、次世代へ、未来へ向けて繋いでいくには「急がない遍路」の楽しさと意義をもっともっとたくさんの人たち、特に若い人たちに伝えていく必要がある。
 晴れの日も雨の日も、風の日も雪の日も、寒い日も暑い日も「楽しい」。納経帳や金剛杖や釣り竿を忘れても、鎖場で死にそうになってもぎっくり腰になっても「楽しい」。札所めぐりの昼遍路も、居酒屋めぐりの夜遍路も「楽しい」。
 歩き遍路は1500km超の長大な遍路道の途中に隠されているさまざまな「宝物」を探す旅なんだなあ、というのが旅を終えたばかりの黒ちゃんの率直な感想である。
 明日は31番札所・竹林寺にお礼参りをしてこのブログ連載を終了する予定です。

開創1200年の節目にスタート、1203年に結願を果たして一句
<ああ楽し 1500キロの 遊園地>

黒笹慈幾


「結願の朝」ムードを盛り上げてくれたNHK高知のテレビスタッフとキャスターの和田智子さん。


民家の庭先をかすめるように善楽寺への遍路道が通じている。


里山の麓を回り込む雰囲気のいい細道が逢坂峠まで続く。


途中で黒ちゃんと同年輩の男性から声がかかった。新聞を見て「尺取り虫遍路隊」がそろそろ通過するのではと、応援のため待ち伏せしていたという。男性は歩き遍路を何周もしている上、百名山全踏破を果たしたという鉄人だそう。


われわれの結願寺、30番札所善楽寺への歩きを撮るTV局のカメラが逢坂峠で待ち構えていた。KUTVテレビ高知、RKC高知放送、NHK高知の3局。ありがたいことです。


いよいよ結願まで800m。残り100kmを切ってからはあっという間だったなあ。


2年間も一緒に歩いていたのに竹内記者とのツーショットはたぶん初めて。結願を果たした善楽寺本堂前で。竹内記者は虚脱の、黒ちゃんは安堵の笑顔。


善楽寺副住職にして僧侶界のアイドル、島田希保さんと記念撮影。島田副住職は特別に御本尊の阿弥陀如来のすぐそばまで我々を案内してくれた。善楽寺の手厚いご配慮に感謝です。


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