Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

123日目「釣欲をかきたてる、スズキとヒラメの海を見ながら大日寺へ」(2016年2月5日)

歩数 28839歩
距離 17.3km
消費カロリー 844kcal

 昨日とまったく同じ、西分駅7:44発奈半利行き列車に乗り込んだ。昨日とまったく同じニキビ面の高校生の少年と一緒だ。「なんだか通勤みたいな遍路ですね」と竹内記者が苦笑いする。確かに乗客も昨日とまったく同じ顔ぶれである(確認したわけではないので、あくまでも雰囲気です)。
 毎日この列車で通勤・通学している定期券の乗客にとって、昨日乗り込んできた我々は通りすがりの非日常の人間だったはず。それが今日も同じように乗り込んできたことで、たぶん頭が混乱しているのではなかろうか、などとたわいもない想像をしながら揺られていると、本日の下車駅「赤野」に着いた。
 今日は、赤野から芸西村を抜け、手結(てい)港をかすめ、香南市夜須(やす)町→香我美町→赤岡町→野市(のいち)町と刻み、あわよくば28番札所・大日寺を打ってしまおうという計画である。グーグルマップの「徒歩モード」で検索をかけると、距離16km、所要時間3時間24分と出た。不可能な数字ではない。あとは黒ちゃんのぎっくり腰のご機嫌次第である。

 赤野駅からは昨日の続きの自転車専用道を歩く。フラットなコンクリート道なので、ぎっくり腰のご機嫌を損ねることもなく、ありがたい。土佐くろしお鉄道「ごめん・なはり線」の高架下を並行していた専用道は、琴ヶ浜海岸の中ほど、和食駅のあたりで砂浜に出た。
 琴ヶ浜海岸は約4kmに渡って美しいアーチ型の砂浜が展開する安芸郡芸西村の海岸である。沖にテトラも見えないので見栄えも大変によろしい。
 遠くから見下ろすと細かな砂に見えた海岸は、実際に足を踏み入れてみると黒い砂と扁平な黒い小石が混じる浜である。その砂と石が寄せ波に持ち上げられ、引き波に引きずられるたびに、ジャリジャリともゴロゴロとも聞こえる音を発する。以前、東洋町のゴロゴロ海岸で聞いたあの音に近いが、こちらはやや優しい音色である。
 この琴ヶ浜海岸、5月から6月ごろにかけて砂ダコという小型のタコが産卵のために接岸するので、黒ちゃんのタコの投げ釣りポイントである。しかし、今の時期は釣り人の姿はなく、岸のすぐ近くを2艘の漁船がゆっくりとちりめんじゃこ漁の網を曳きながら航行しているだけである。
 タコはいなくてもひょっとしてヒラメはいるかもしれない。ちょこちょこっとルアーを投げてみたい衝動にかられるが、今回は釣り竿を持ってきていない。結願の遍路にさすがに釣り竿は不謹慎だと判断したのわけではない。ぎっくり腰騒動ですっかり忘れていたのである。悔しいなあ。

 ヤ・シィパークをやり過ごし、赤岡町に向かう遍路路から海は見えない。高い防潮堤に視界をふさがれているからだ。そこであえて遍路道を外れ、防潮堤の上を歩くことにした。防潮堤の上は自動車もギリギリ乗り入れができる広い道になっている。ここからは香我美町から赤岡町にかけての砂地の海岸線を、左にずっと見ながら歩くことができる。
 水際から沖にかけて4、50mの海底に、小さな岩礁があちこち隠れているのがわかる。テトラが沈んでいるのかもしれない。薄いブルーの海底がそこだけ黒々としているからだ。なんとも目に毒な景色である。
 「竿なし」で来てしまった「釣バカ尺取り虫遍路隊」にとっては拷問のような区間である。「あの岩礁とあの岩礁の間の狭い水路にルアーを投げ込めばひょっとして」などと頭の中はヒラメとスズキ色に染まる。心はここに残りたいのに、体は大日寺に行かねばならない。
「お遍路を終えたら、のんびり1日、この海岸で竿を振ろう」
 竹内記者と固く誓う黒ちゃんでありました。

 野市町の友人宅で美味しいコーヒーのお接待を受け、途中でラーメンランチを済ませ大日寺の門前にたどり着いたのは午後2時ちょうど。大日寺は四国霊場第28番札所である。我々の結願の寺、善楽寺は30番だから、いよいよ結願まで残す寺は2つだけとなった。
 大日寺は市街地から1kmほどしか離れていないのに山寺の風格を備えた清々しい寺である。ご本尊は聖武天皇の勅願により行基菩薩が刻んだと伝えられる金剛界大日如来坐像。高さ146cmの寄木造りで、四国では最大級だそう。国の重要文化財に指定されている。

 ところで。今朝、宿舎のホテルを出発しようとしたらスマホにショートメールの着信音が…。先月お世話になった室戸市佐喜浜(さきはま)町の食堂兼居酒屋「みかど食堂」の女将・山本世志恵さんからである。
「結願なのにぎっくり腰とは、どうぞお大事に。竹内さんと豊岡さんの後押しで一歩づつ進みますことを…。」
 うれしいお気遣いのメールである。
「先月はお世話になりました。ぎっくり腰遍路に向けて元気の出る一句、お願いします」
 と返す。山本さんはちゃんとした俳人なんである。すると、
「結願へ 大師の御手 まさぐりぬ」
と詠んできた。なるほど、最後はやっぱりお大師さまにすがるしかないのか。でも、できればもっと艶っぽい手がいいんだけどなあ(笑い)。

 山本世志恵さんに便乗して一句
 <さすってよ 大師の御手 我が腰を>

黒笹慈幾


土佐くろしお鉄道「ごめん・なはり線」赤野-西分間の高架下に作られた自転車専用道路。一部クルマと共用部分はあるが、フラットで歩きやすい。


琴ヶ浜海岸の波打ち際。砂の「黒」、海の「青」、波の「白」が作り出すコントラストが美しい。


しばし「砂浜遍路」とシャレてはみたが、ものすごく歩きにくくて腰に良くない。早々に自転車専用道路に戻った。


和食の琴ヶ浜海岸。安芸市から手結港までは海沿いに自転車専用道路が作られていて遍路道としても使える。


手結岬を抜けると夜須町手結(てい)の集落と港が見えてくる。


手結港名物の跳ね橋。道路がそのまま直立する跳ね上げ式なので、こうしてみるとかなり異様な風景である。


手結港の通称「黄燈台の堤防」。ヤ・シィパーク側の湾ではシロギス、ヒイラギ(高知名ニロギ)などの小物だけでなく、スズキやサワラ(高知名サゴシ)などの大物も釣れる。


香我美から赤岡にかけての海岸線沿いに作られた防潮堤の上。このようなコンクリートの広い通路になっていて、ヒラメ色の(笑い)海を見ながら歩ける。


赤岡の町の旧街道にかかる橋。前方に津波避難タワーが見える。


野市町の友人宅に寄ると、今朝手結港で釣ったばかりという70cmオーバーのヒラスズキを見せられた。大きい!悔しい!釣りたい!


香南市野市町にある28番札所・大日寺の山門。市街地が近いのに山寺の風格が漂う。


大日寺の境内。正面が本堂、右手が六角堂。写っていないが左手に大師堂がある。


納経帳にいただいた大日寺の墨書と朱印。御本尊大日如来の守護梵字・バンがなんとも美しい。


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