Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

117日目「岬めぐりのお遍路旅。室戸岬の次は行当岬」(2016年1月19日)

歩数 18020歩
距離感 10.8km
消費カロリー 503kcal

 昨日打ち終えた津照寺の門前を9時40分にスタートした。昨晩の佐喜浜「みかど食堂」での夜遍路でやや飲みすぎたので、いつもより出発を遅くしたのだ。佐喜浜の町は昼もよかったが、夜も素晴らしかった。遠来の客を温かい「おもてなし心」で包み込んでくれる。ますますこの町を去り難くなったが、我々はお遍路さんなので、次の札所に向けて歩かなければならない。
 「またゆっくり来てや」という「みかど食堂」の女将さんに見送られ、昨夜は後ろ髪引かれる思いで民宿徳増に帰ったのだった。

 さてと。今日我々が打つべき寺は26番札所の金剛頂寺(こんごうちょうじ)である。津照寺から距離にして5kmあまり、大きく海に張り出した行当岬(ぎょうとうみさき)の尾根上に建てられた寺である。
 地元では古くから最御崎寺を東寺(ひがしでら)、津照寺を津寺(つでら)、金剛頂寺を西寺(にしでら)と呼んできたそうだが、トンビの目で空中から室戸市を俯瞰すると、東の尾根上に東寺、西の尾根上に西寺、その真ん中の津(港)の位置に津寺がある。航空写真で測ったように3寺を配したお大師さまのトンビの目(いや、ドローンの目か)はさすがである。
 室津から歩き始めて小一時間、室戸市元(もと)の集落の奥から金剛頂寺への歩き専用の遍路道が付けられていた。急な登りの山道を600mほど登ると、ぽこんと金剛頂寺の門前に出た。
 午前11時過ぎの境内は閑散としていて、立派な構えの本堂が静かにあたりを睥睨していた。寺の縁起によると平城天皇の勅願により大同2年(西暦802年)、ご本尊の薬師如来像を弘法大師が刻んで寺を創建したとある。金剛頂寺の霊宝殿には木造阿弥陀如来坐像、板刻真言八祖像、銅造観音菩薩像、金銅密教法具、金剛頂教などの国指定の重要文化財が収蔵されている。

 参拝と納経を済ませてから接待所脇の展望台に向かう。ここからは室戸岬と室戸市中心部、室戸西海岸の海をひと目で見渡すことができる。弘法大師の「トンビの目」を体験できる素敵なビューポイントである。爆弾低気圧が通過した直後の室戸の海は、青いキャンバスの上に白い絵の具を撒き散らしたような、一幅の抽象画であった。

 12時少し前、我々は行当岬の尾根から反対側の吉良川市街に向けて歩き始めた。やがて遍路道を外れ、少し山寄りの農免道路に針路をとった。黒ちゃんの知り合いの農家、瀧本登さん(73歳)の山小屋を訪ねるためだ。
 瀧本さんは現在、吉良川町の高台にある3haの畑でさつまいもを、海岸近くでビワを栽培して生計を立てている。そして畑の一角にログキャビンを構え、夜な夜な優雅な隠れ家生活を楽しんでいる。今日はその隠れ家を見せてもらう約束なんである。
 農免道路から未舗装の道を少し下った崖っぷちに瀧本さんのログハウスは建っていた。直径40cmくらいの丸太を、正式のカナディアンログ風に組んだ立派な丸太小屋である。中を覗くとリビングには薪ストーブが置かれ、座り心地の良さそうなアームチェアが4、5脚、テーブルの上にはビールの空き缶がたくさん転がっている。
 海に面したウッドデッキの先には、なんと露天風呂まである。すごいのはこの山小屋がセルフビルド、つまり瀧本さんの手作りだということ。どうしても調達不能な建築資材以外はすべて自分の労力とリサイクル品で間に合わせたという。
 瀧本さんは元は農家だったが、若いころはマグロ船の船員、水中作業のダイバーなどを経験、60歳を過ぎてから農業に専念するようになった。機械の修理、小屋の修繕などなどなんでも自分でできる上に、古物商の免許も持っているマルチ人間なのだ。
 野菜は自分の畑で、米も自分の田んぼで、魚は息子さんが海でそれぞれ調達。肉はイノシシと鶏を畑の一角で飼っている。「食料は全部自給自足で買うのはビールだけや」と笑う素敵なおんちゃんである。
 露天風呂が大好きな黒ちゃん、ビールに目がない竹内記者である。農閑期の6、7月に「隠れ家の露天風呂で海を見ながらビールをしこたま飲もう」と約束して別れて、吉良川の町に降り立ったのは午後2時少し前だった。

 金剛頂寺から室戸の町を俯瞰して一句
 <東寺 津寺西寺 トンビの目>

黒笹慈幾


佐喜浜の宿の2階から見た朝の海は大荒れで真っ白。夜中じゅう海鳴りがしていたのは爆弾低気圧のせいである。


前方の岬が行当岬。この岬の尾根上に金剛頂寺がある。


国道55号から分かれて金剛頂寺へ向かう分岐の案内標識。


金剛頂寺まであと600mの地点から急坂の歩き遍路道が始まる。


金剛頂寺の本堂。ずっしりとして貫禄のある佇まい。


金剛頂寺の境内から見た室戸岬とその西側の海。強い西風を受けて海面が騒いでいる。


金剛頂寺の駐車場の隅に置かれた古い貨車の中は、改造されてこのように素敵なカフェになっている。内部は漆喰が塗られ元貨車とは思えない。


貨車カフェの外観。外側はかなりくたびれている。


サツマイモ畑の一画にログハウスを手作りした瀧本登さんと、ウッドデッキで記念撮影。土佐湾の水平線が見渡せる高台に建てられている。


総コスト50万円で建てた瀧本ログハウスはまさに「大人の隠れ家」。


隠れ家の内部。薪ストーブにアームチェア、ロフトつきの本格ログキャビンである。


イノシシの子が数頭、ケージの中で飼われていた。「来年の冬までしっかりと太らせて食べる」と瀧本さん。


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