Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

115日目「出発から115日め。四国遍路の聖地・室戸岬にたどり着く」(2016年1月17日)

歩数 23779歩
距離 14.2km
消費カロリー 704kcal

 歩き遍路さんが高知県に入って最初に打つ寺が24番札所・最御崎(ほつみさき)寺である。約1年ぶりに高知県に帰ってきた我々尺取り虫遍路隊にとっても最初の寺だ。今日はその最御崎寺をいよいよ打つということで、同行の高知新聞竹内一記者は朝から気合の入った顔をしている。
 室戸は空海が悟りをひらいた地として、四国八十八ヶ所霊場を巡るお遍路さんにとって特別な場所である。空海の生きた時代の室戸は人の住む場所ではなく、鬼の住む場所であった。道もなく人家もない室戸半島の先っぽまで、山を越え、水際をへつり、沢を下り、地を這ってたどり着いた空海の難行を思うと、今日1日は厳粛な気持ちにならざるを得ない。

 朝8時に民宿徳増を出発した。昨日歩いておいた2kmほど先の「夫婦岩」まで、テレビ高知のスタッフのクルマで送ってもらう。「厳粛な気持ちで出発してすぐクルマかよ」と言われそうで、ちょっと気恥ずかしい。じつは、高知県に戻ってきて最初の寺を打つ我々の様子を取材に来てくれたのだ。
 ミーハーというわけではないか、正直うれしい、大歓迎といっても良い。というのは、ほぼ1年をかけて愛媛、香川、徳島と各県の札所を順番に巡ってきたが、その間メディアの取材は皆無であった。
 毎日欠かさず新聞とブログの原稿を書き続けているのに、誰も声をかけてくれない(当たり前か)。竹内記者と二人でずいぶん寂しい思いをして、毎夜やけ酒をあおったものである(ウソです)。

 夫婦岩でスタートのシーンを撮り終えて歩き始める。次の撮影ポイントは4kmほど先の椎名漁港の防波堤である。「釣りときどきお遍路」という黒ちゃんのブログタイトルなので、テレビ局的には釣りのシーンは欠かせないのだ。仕事だから仕方ない。先を急ぐ気持ちを抑えて、防波堤の先っぽでしばし釣りを楽しむことにした(これもウソです)。
 リュックに入れてきたのは5.4mの振り出し式渓流竿と電気ウキ、1.7号のライン、1.5号のハリス付きチヌバリ、かみつぶしオモリだけである。このシンプルな仕掛けに昨日佐喜浜の釣具店でで買っておいた冷凍オキアミを刺して放り込む。
 防波堤の小物釣りをリールを使わず延べ竿で楽しむこの方式は、黒ちゃんの友人の作家・夢枕獏さんの流儀。最近は黒ちゃんもこの釣りにはまっている。
 まず、道具立てがコンパクトかつ軽量になる。次に、小さな魚でも竿が大きく曲がるのでギャラリー受けが良いし自分も楽しい。そして最後に、何よりささっと取り出してささっと仕舞えるので「お遍路中でも釣りをしたい」という「どうしようもない釣りバカ」に向いている。我々のことなんですがね(笑い)。
 釣りシーンの撮影は20cmくらいのサイズのタカベが2匹、予定どおり竿を絞ってくれて大成功。さすが黒ちゃんにはお大師さまがついてるなあ。

 椎名の防波堤での釣りの仕事を1時間で片付けて、いよいよ室戸半島最先端に向けてスピードを上げる。撮影隊は途中ところどころで待ち構えていて、我々の歩きを撮るという展開がしばらく続いた。
 室戸岬までの国道55号線はずっと海沿いに作られているのだが、海ぎわにはかなりの高さの防波堤が延々と作られていて、海が見える箇所は意外に少ない。
 ところが防波堤の上を歩いてみると(2段式なっていて、下の段は安全)、幅1.5mほどのの平坦なコンクリートの道である。歩きやすい上にいつも海を見ながら潮騒を聞きながら歩ける。これってまさに歩き遍路専用道である(ゆっくりなら自転車でも走れる)。
 佐喜浜から先、室戸岬までの区間を歩くお遍路さんには、車道を歩かずに防波堤の上を歩く「防波堤へんろ」を強く強くおすすめする。

 途中にカツカレーのランチをはさんで、御厨人窟(みくろどくつ)に着いたのは午後1時半。この洞窟の中で19歳の空海は厳しい修行の末、ついに真言密教の秘法「虚空蔵求聞持法(こくうぞうぐもんじほう)」を感得したと言われている。
 口の中に「明けの明星(金星)」が飛び込むという超常体験をするのもこのときである。この秘法は一度見聞きしたものは絶対に忘れず、無限の知恵を手に入れることができるというもので、のちの空海の天才的な能力の源泉はここにあるとされている。

 御厨人窟の先に最御崎寺への歩き遍路専用道が見えたので、ここから登ることにした。はるか下界から聞こえてくる潮騒をBGMに、息を切らして急峻な山道を登ること20分。24番札所・最御崎寺の仁王門の前に出た。1年間の他国放浪の末、テレビクルーを引き連れて(笑い)再び土佐の地を踏むことができたという喜びがじわりと湧いてきた。
 残すはあと6つの寺だけになった。

 土佐の最初の札所、最御崎寺の門前に立って一句
 <虚空蔵 にらむ空には 雲ひとつ>

黒笹慈幾


夫婦岩の向こうに昇る朝日。室戸の海はとにかく神々しい。


朝、堤防の上を歩く竹内記者と黒ちゃんの影が民家の壁に映る。


椎名の防波堤でしばし釣りタイム。堤防のコンクリートの上には黒い墨跡が点々。アオリイカの道具を持ってきていない竹内記者の悔しがること。


椎名港から岬に向けて歩き始めてすぐ、海岸に打ち寄せられたザトウクジラの死体を埋めるところを目撃。ユンボ2台がフル稼働で埋葬作業を行っていたが、体長7メートルの子クジラだという。あたり一帯に腐臭が漂っていた。合掌。


佐喜浜から室戸岬にかけて、国道55号線に沿って作られている堤防の上はこんな感じ。海を見ながら歩ける歩行者専用のへんろ道。


堤防の上て日向ぼっこをしていた地元のおじさんの職業は漁師。「今日の漁はさっぱりだった」


半島の先端にある24番札所・最御崎寺まであと少し。


高岡港近くまで来ると海洋深層水に関係する会社の施設が増えてくる。ずいぶんカッコイイ建物である。


「ホテル明星」の食堂でテレビ局のスタッフにカツカレーをご馳走してもらう。サンキューKU!


ついに地球の博物館、ジオパーク室戸岬に立つ。


空海が1200年前、この洞窟に篭って修行したといわれる御厨人窟。真上の岩盤が崩落して現在は立ち入り禁止に。


御厨人窟のすぐ脇に歩き専用のへんろ道の登り口がある。


かなり急だがしっかりとした参道。下の方から室戸の海の潮騒が聞こえてくる。


24番札所・最御崎寺の仁王門。最御崎寺は徳島から高知に入ってくるお遍路さんが最初に打つ寺である。


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