Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

112日目「師走遍路の最終日に、お大師さまのサプライズが大炸裂!」(2015年12月21日)

歩数 19956歩
距離 11.9km
消費カロリー 560kcal

 2015年師走遍路の最終日である。結果的に1年を締めくくることになるこの原稿を書きながら思い返すのは、今年は1年を通じてきちんと毎月約1週間ずつ、休まず飽きず腐らず真面目に「尺取り虫」を続けた1年だったな、ということである。前年は8月と11月をそれなりに事情があったのだが休んでいる。
 歩くだけでも楽しい春や秋だけでなく、酷暑の夏も凍える冬にも逃げずに向き合ったという意味で、「歩き遍路の原点」を味わったといえる年だった。しかし、実際に歩いてみれば、夏にも冬の中にも「楽しさ」は潜んでいた。
 歩き遍路というのは春夏秋冬、昼も夜も、晴れても降っても吹いても釣っても(笑い)楽しい「全天候型年中無休エンタテインメント」なんである。

 今日のスタート地点、野根大橋のたもとまで宿のクルマで運んでもらった。朝の10時少し前である。車のドアを開けると、山の方角から野根川の川面を渡ってくる風に、ほんのりスモーキーな香りがする。橋から500mほど上流に土佐備長炭の炭窯があり、黒ちゃんは10月の中旬になるといつもその窯の前の瀬で鮎を釣るのである。
 半年くらい前のニュースで備長炭の生産額で、高知県が和歌山県を抜いてトップになったと報じられたが、稼働中の備長炭窯がまだあちこちにある高知なんである。事情通に聞くと高知には和歌山と比べて
1.素材のウバメガシがまだまだ豊富
2.生産効率のいい大規模窯が多い
3.若い後継者が増えている
という理由があるらしい。なんだか明るい話題である。

 野根漁港を過ぎるあたりから進行方向左手に、濃いブルーの一直線が始まり、それが進むにしたがってどんどん長くなり、最後は視野全体に広がった。心なしか弧を描いているように見える。圧倒的な存在感と威圧感で「海」という自然の構造物が我々の目の前に横たわる。
 すぐ足元の玉砂利の渚から「何か重たいもの」を引きずるような、あるいは「何やら硬いもの」を捻じ切るような異様な音が聞こえる。打ち寄せる波が海中の玉砂利を引きずり、押し上げ、もてあそぶ音である。
 凄まじい自然の力が1秒も休まず何千年何万年もの間、この海辺に押し寄せている音だ。当時19歳の弘法大師空海が「地の涯て」室戸に惹きつけられ、まさにこの海辺で森羅万象宇宙の原理(ことわり)を感得したのもうなずける。
 恥ずかしながら黒ちゃんは何度もこの同じ道をクルマで走っていながら、今まで一度もこの音を聞いたことがなかった。この道を自分の足で踏みしめたからこそ聞くことができた貴重な音なのだ。昨日も書いたが「歩くことの深い意味」を考えさせられる師走遍路最終日であった。

 われわれは室戸市佐喜浜(さきはま)町入木(いるぎ)の集落で本日の歩きを終えた。ちょうどいい時間のバス便がなく、竹内記者がタクシーを呼んだ。
 10分ほどして現れたのは軽のワンボックス。車体には「福祉輸送車両 ひまわりタクシー」と書かれてある。間違えて介護タクシーを呼んじゃったのである。運転手さんも待っていたのが派手なファッションの遍路二人組なので、一瞬驚いたようだったが、最後は「まあいいか」てな感じで乗せてくれた(あのう、黒ちゃんはいちおう介護保険証を持っているんですけど)。
 助手席は竹内記者に譲り、黒ちゃんは後部の車椅子席に座った。生まれて初めての車椅子体験である。ひじ掛けも付いた一等席、なかなかの乗り心地である。介護タクシーは30分弱で宍喰の町に到着した。

 感動的な室戸の海と乗り心地のいい車椅子の介護タクシー…。お大師さまは最後の最後にとんでもないクリスマス・プレゼントを用意してくれていたのである。つくづく油断のならないお方である。12月の室戸では、ひょっとしてお大師さまがサンタクロースを兼ねてたりして(なんのこっちゃ)。

師走遍路の最終日に室戸の海を前にして一句
〈空海も 食うか室戸の ヒラスズキ〉

黒ちゃんのお遍路ブログ「釣りときどきお遍路」日記、2015師走編は今日で終了です。ご愛読ありがとうございました。2016新春編は1月中旬スタートを予定しています。来年もご愛読よろしくお願いいたします。

黒笹慈幾


「ペンションししくい」の朝食。スイートコーン入り卵焼きに、サツマイモの皮入りポテトサラダと野菜、バナナ入りヨーグルト。このほかにパンとコーヒーが付く爽やかなメニュー


「ペンションししくい」の先代のオーナー。敷地内の建物はすべてこの人の手作りというからすごい。今は財布を息子夫婦に渡し、のんびり悠々自適のご隠居さん暮らし。羨ましいなあ。


「電話で予約を入れたお客さんだけの特典」と言われて、こんなステキなハワイのクリスマス・オーナメントをいただいた。サーファーのサンタさんである。


高知県のいちばん西にある清流、野根川の河口部。10年以上前から黒ちゃんのアメゴと鮎釣りのホームグラウンドだ。この川の上流部は徳島県になる。


地図で見るとまっすぐな室戸半島東の海岸線だが、歩いてみると必ずしも直線ではなくいくつもの岬が出ているのが分かる。


小さな玉砂利の砂浜、じゃなかった砂利浜が続く東洋町内の海岸線。打ち寄せる強い波が砂利をもてあそぶときに出る音が、なんとも不気味である。


打ち寄せる波しぶきをかぶりながら、釣り師は室戸の魚を狙う。仕掛けを見るとターゲットはグレのようだが、このポイントには絶対ヒラスズキが潜んでいる。


高知まで111、室戸まで33とゾロ目が揃った距離表示版。ここまでくれば結願の寺、30番札所・善楽寺までのカウントダウンを始めてもいいだろう。


ここにもひとり、釣りバカが。お遍路の途中でなけりゃ、もうひとりの釣りバカがそばまで偵察に行くんだけど。


佐喜浜町入木のバス停前で本日の歩き終了である。タクシーを待つ間こんな若者のようなベタ座りが似合うようになった前期高齢者の黒ちゃんです(笑い)。


タクシーを呼んだらやってきたのはこの介護タクシー。過疎の地域では、要介護のお年寄りの足である。


介護タクシーの後部座席はこのような車椅子。黒ちゃん、車椅子は初体験、乗り心地バツグンです。


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