Let’s go o-henroad! 「お遍路ードプロジェクト」について

109日目「カッコいい理趣経のリズムで歩きたいのに、太腿の鈍痛がじゃまをする」(2015年12月18日)

歩数 26848歩
距離 16.1km
消費カロリー 884kcal

 前夜宿泊した「鯖大師(さばだいし)へんろ会館」では宿泊者は夜7時からの護摩修行と朝6時からの勤行に必ず参加しなくてはならない。最初は辛気臭くて気が進まなかったのだが、夜の護摩修行に参加してその考えはぶっ飛んだ。
 ご住職が護摩炉に細長く切った薪木をどんどん投げ入れて燃やすと、炎が天井を焦がすかと思うくらいに上がり、独特の芳香を放つ真っ白い煙が護摩堂の中に充満する。息苦しくなり、ひょっとするとこのまま窒息するかと思われるくらいの激しい修行というかパフォーマンスだった。
 ちょうどキャンプ・ファイヤーを室内でやっちゃった感じといえばその大胆なイメージを伝えられるかも(笑い)。それほど迫力たっぷりの護摩焚きだった。鯖大師の護摩堂では毎夜この派手な護摩修行をやっているというから、ぜひ一度宿坊に泊まってみることをお勧めする。本当にすごいんだから。
 ところで「鯖大師へんろ会館」では京都にある真言宗智山派の総本山、智積院(ちしゃくいん)付属智山専修学院の20数名の生徒さんたちと同宿になった。これからプロのお坊さんになる学生たちである。卒業前の実習で主だった智山派の寺を回って現場の様子を学んでいるのであろう。
 朝の勤行で彼ら彼女らによる30分近い理趣経(りしゅきょう)の見事な集団読経を聞けたのは幸運だった。引率の先達さんによると、理趣経は全巻唱えると1時間以上かかるので、これでも端折っているのだとか。その理趣経の般若心経とは全く違う独特のリズムと経文に黒ちゃんは魅せられてしまった。なんてカッコいいんだ。
 インターネットで調べてみると「理趣経」とは「般若理趣経」とも言い、空海が中国から持ち帰った真言宗の常用経典。真言宗の僧侶が執り行う葬儀や法事で読まれるのは、まず間違いなくこの経典だという。普通の経典が呉音で読むのに対し漢音で読むため、聞いていて軽快な感じがするのだという。確かに黒ちゃんもそう感じた。
 たとえば金剛というのを「こんごう」ではなく「きんこう」と、清浄を「しょうじょう」ではなく「せいせい」と読み、如来を「にょらい」ではなく「じょらい」と読む。また一切は「いっさい」ではなく「いっせい」。聞いただけでは言葉が当てはまらないところがなんとも不思議でカッコいい。

 さて。学生たちの理趣経の読経斉唱を聞いて、朝8時30分に気分よく宿を出たのはいいが、1kmも進まないうちに左の腿の付け根の筋肉と筋に鈍痛が走った。昨日の後半から出ていたが一晩寝ても回復せず、夜の護摩修行も朝の勤行も効き目がなかったようだ。
 本当は理趣経のリズムに合わせて「せいせいいっさい」「せいせいいっさい」と歩きたいのだが、左足が言うことを聞かない。今日は次の宿泊先である宍喰のペンションまでどうしてもたどり着かねばならない。距離にして約15kmある。
 竹内記者が心配して「もう少しペースを落としたら」と気遣ってくれるが、ペースの問題ではないし、竹内記者に気遣われるのも癪にさわる。いままで彼を気遣ったことはあっても気遣われたことはない。悔しいなあ。きのう野田知佑さんにいただいた元気もどこかに行っちゃったようである。

 徳島県海陽町鯖瀬から宍喰(ししくい)、そして高知県東洋町野根に至る今回のお遍路ルートは、黒ちゃんの東京時代に釣りで徳島空港からレンタカーを飛ばして、海部川や野根川に通ったのとまったく同じ道である。
 目に飛び込んでくる風景も人々の暮らしの様子も既視感がある。そういう意味で、一昨日の薬王寺までのルートとは大いに違う。これからはロケハンがバッチリできている。だから、歩き遍路をしても刺激や驚きが少ないのではとの危惧があった。
 しかし、それは杞憂だった。クルマで通過するときの刺激と、歩いた時の刺激は全く違う。歩くことによって人のカラダに入ってくるさまざまな情報の質と量が違うのだというこに気付いた。「歩く」という行為の持つ奥深さを、改めて教えられた2日間である。

 一向に痛みのおさまらない左足を、中華料理店でのランチ休憩やコンビニのコーヒーブレイクでなだめすかししながら、宍喰の宿「ペンション宍喰」に着いたのは午後1時。
 じつはこのペンション、黒ちゃんが作家の夢枕獏さんと釣りに来るときにいつも利用する定宿で10年以上通っている。なぜこの宿がふたりとも気に入っているのかの詳細は、紙幅が尽きたので明日書くことにする。

 学生たちの理趣経一斉読経に感動して一句
 <理趣経の カラオケないの 竹内くん>

黒笹慈幾


四国霊場番外札所「鯖大師本坊」。ご本尊は鯖を手に持った弘法大師さま。魚好きの黒ちゃんにはたまらないお寺です。


鯖大師の大師堂前にはこんな立派な鯖の石像が…。鯖がここまで丁重な扱いを受けるのはたぶんここだけだろうなあ。


この時期、朝の光はこんなに斜めに差してくる。黒ちゃんと竹内記者の長〜い影が畑に伸びる。


全国に鮎の名川としてその名を轟かせる海部(かいふ)川。この写真の場所は10月に黒ちゃんと獏さんが鮎のエサ釣りで入るヒミツの一級ポイントだ。


海部川の橋を渡る。鮎のシーズンが終わり、さすがに河原には釣り人の姿は見えない。


海部の中心部を過ぎしばらく歩くと左に那佐(なさ)湾の細長い入江が迫ってくる。黒ちゃんはずいぶん前からこの湾が気になっていた。もちろん釣りのポイントとしてだ。海陽町鞆浦にて。


いましたよ、那佐湾で釣りをしている人が。軽トラを風除けにして(笑い)、キビレチヌの小さいのを数枚釣っていた。ここではアイゴの大型も釣れるそうだ。


徳島県のいちばん南の海、宍喰浦。白砂青松の美しい海岸が続くこのあたりはいい波が立つので、日本中からサーファーが集まるサーフィンの聖地でもある。


宍喰湾の入口にあるコンビニ裏の見晴らし抜群の堤防の上で横になる黒ちゃん。じつはかなりへばってマス。


宍喰湾を見下ろす場所に立つお遍路の標識。札所と札所の間が90kmも離れているのはこの間だけである。


<<前の日へ      次の日へ>>